歯科治療8年の苦労ばなし 3

                                                            
 もう土曜日ですね。
 
このブログを始めて2週間になりますが、
 
1週間に1度の連載でも、けっこう忙しいものだと感じています。
 
でも、期待していた以上に、たくさんの方が訪ねて下さって、本当に嬉しいです。
 
 新しく作ったスプリントのことをご報告しますね。
 
スプリントというのはマウスピースのようなものです。
 
最初の日、こんなでっかいものを口の中に付けて眠れるのかと、
 
部分入れ歯とスプリントを前に、ベッドへ行く気にはなれませんでした。
 
深夜1時過ぎて、思い切って付けてみると、意外でした。
 
付けると、上下の唇は、とじ合わせることが出来ません。
 
でも、付けた方が口の中が、かえって広くなるようです。
 
いつもは、部分入れ歯が舌に触って痛いし、気になるし、イライラして、
 
寝付くまで、右、左、上、下と寝返りを何度も打っていたのですが、
 
それ程ではなくなったのです。
 
そのうえ、喉が詰まらずに、息まで楽になって、
 
久しぶりに熟睡できたような気がしました。
 
まだまだどうなるか分かりませんが、今度の先生にお任せしようと思っています。
 
 さて、今日は、第4章、3軒目の歯医者からです。

                       P1000334

 
                       「歯科巡歴の記ー蟻地獄に落ちた」
 
        第四章  三軒目の歯医者
   一  地獄の拷問 
 二人の友人の勧める三軒目の歯医者へ行ったのは、ゴールデンウィーク直前、
 
四月二十六日だった。
 
 出だしから良くない。行く途中で健康保険証を忘れたのに気が付いた。取りに帰れば
 
予約の時間に遅れてしまう。保険証を持っていないので、友人二人の名前を紹介者の欄に
 
書く。しかし、結局、料金は自費扱いになった。その歯科医院には年寄り、若いの、歯医者が
 
二人いる。友人の話からすると若い方が良さそうだ。紹介者の名前を書かなければ、
 
たぶん若い歯科医の担当になっていただろう。年寄りの院長へ回された。
 
 大先生と呼ばれるその歯医者は、テレビドラマ “ER” の “ロマノ” そっくりで、
 
背の低い禿頭の老人だった。エネルギッシュにセカセカとよく動き、口が悪いのも似ている。
 
我が歯科医院の自慢話を一通りしてから治療にかかった。他の歯医者が治療した後をする
 
のが、いかに難しいかも力説した。
 
 
 
 二週間で七回通った。
 
 まず、ブリッジの脚になる二本の歯を治療し直した。
 
「麻酔をして、残っている細かい神経を綺麗に掃除します」
 
 レントゲン写真では、治療前は神経を抜いて薬を詰めた跡が細かった。治療後は、すっかり
 
えぐられ太い楔のようになってしまった。
 
 次に、二軒目の歯医者が、あちこち触ってはいけないと言った左上の虫歯を削る。
 
その奥横の歯も虫歯が伝染しているからと削る。二本ともダイナミックに削った。なぜそんなに
 
削らなければならないのかと思うほどだった。
 
 虫歯の前隣の歯も高すぎると言って削った。以前入っていた左下のブリッジが低すぎた
 
ので、上の歯が伸びて高くなっていると言う。二軒目も同じ事を言った。そこですでに低く削っ
 
いたはずだ。
 
「削り足れへん。もっと思い切って削らな」
 
 さらに、上の左右の歯を二本ずつ、合計四本削って低くする。断りも無しに手早く削った。
 
噛み合わせが左右対称になっていなかったという。
 
  痛さは治まるどころか、日増しに酷くなった。以前はブリッジをセメントで留めると痛かった。
 
それが、留めなくても四六時中痛い。半端な痛さではない。我慢できない。三時間おきに
 
鎮痛剤を飲む。夜、午前一時頃、薬を飲んで床に就く。やっと眠れても、早朝四時ごろ、
 
痛くて目が覚める。
 
「痛かったら言うてな」
 
 最初は優しかった。
 
 四日目から態度が変わった。
 
「ますます痛くなりますが」
 
「痛いしかよう言わんのか! 他に言うことないんか!」
 
「痛み止めの薬を出していただけませんか」
 
「あんた痛がりや! 薬飲んだかて治るか! そんなもん!」
 
 取り合ってもくれない。
 
 どうして痛いという言葉では伝わらないのだろう。どう表現すれば解ってくれるのだろう。
 
 他の言葉を使ったり、詳しく説明しようとしたが、ますます機嫌が悪くなる。
 
「痛いと違ごうて、ちょっとはましになったとか、他によう言わんのか!」
 
 はっ? 痛いから痛いとしか言えない。
 
「そんなガタガタの歯して!」
 
 あげく悪口雑言。ドクハラに耐える。簡単に治ると思っていたのに、そうはいかないので、
 
どうして良いか解らず患者に八つ当たりしているとしか思えない。
 
左下三本、左上五本、右上二本、合計十本に手を付けている。こんな治療途中で、どこへ
 
行けばいいのだろう。行く当てもない。 
 
 
 
 鎮痛剤を飲み続けないと我慢できない痛みが続く。
 
 それにもまして、治療時の痛さは理屈なしの恐怖そのものだった。
 
 ついに、あまりの痛さに、歯医者に行く足がすくみ、怖くて行けなくなってしまった。
 
まるで、幼児がなにかを恐れるような、そんなふうだ。いい歳の大人がこんな恐怖心を持つ
 
のかと我ながら不思議だった。
 
 ドリルのようなもので歯の根を削る。ギーンと機械音が迫ってくる。自分では削られている
 
場所は見えないのに、そこが白銀灯で照らされ煌煌と明るいのが目に浮かんだ。眩しくて
 
正確な場所も分からないまま、生の肉を太い針で切り裂かれているような気がした。
 
じっとりとした灼熱の痛みが、歯の根の奥底まで占領する。心の中まで深く突き刺さった。
 
 ドリルが襲った歯の根の奥の、その裏側の首筋から、突如、鳥肌が竜巻のように芽を出し、
 
瞬時に全身を覆う。冷汗がみぞおちを伝う。
 
 寒い! 
 
 そう感じたときには全身の肌がすでに汗でびっしょり濡れていた。薄い下着が肌に張り付く。
 
 冷たい汗が存在するのを知った。
 
 こんな恐ろしい経験は生まれて初めてだ。拷問だった。
 
 それを、「あんた痛がりや!」は、ないだろう!
 
 
 
 七回目が最後になる。
 
「あんた、痛い、痛いと人聞き悪いやないか。他所で悪うして、うちへ来たんと違うんか!」
 
 堪忍袋の緒が切れた。それまでは、こちらは患者、遠慮気味に話していた。
 
「前の痛さと、今の痛さは、はっきり程度が違います」
 
 きっぱりと言い返した。
 
「あんたの痛みは歯と違う。歯茎が悪いんや」
 
 えっ! 今さらなにを言う。それでは今までのあの恐ろしい痛い治療は、なんだったのか!
 
「さっき、歯の根を削った時のあの痛みはなんですか。歯茎の痛みですか!」
 
「痛いとこ削ってたか……」
 
「はいっ!」
 
「それは…触ってはあかん場所や。神経や……」
 
「毎回、ズーッと、そこを削っていましたよ!」
 
「…………」
 
 鎮痛剤が効かなくなった。
 
 飲み物が歯の真ん中から根本の先に沁みていく。痛い。痛さが増す。
 
 顎の下をそっと触っても、喉を通り越し、歯茎の骨も肉も突き抜けて、歯の先端まで飛び
 
上がらんばかりの激痛が走る。
 
 とんでもないことになってしまった。どこか大きな病院へ、すぐ替わらねば。
 
 
 
 紹介してくれた友人の話を単純に鵜呑みにしたのが馬鹿だった。
 
 その後、聞いた話に絶句した。
 
 七本治療した友人は、治療が終わってからも痛くて、二、三度行ったが相手にされず、
 
せっかく来たのだからと歯石を取って帰された。困ったあげく大学病院歯科へ通う。
 
被せた歯の細工には大学病院の歯科医も感心した。壊して中を見るには七十万円もする
 
高価なものだ。簡単には手が付けられない。そのままで様子を見る。一年程で徐々に痛みは
 
弱くなったが、すっきりと治らない。鎮痛剤を飲んでいる。なぜか力が入らなくて、しっかり噛む
 
ことも出来ないという。 
 
 二人とも私の歯の治療が巧く行って、やっぱり上手だと確認できれば、残りの歯の治療に
 
行くつもりだった。私が通い出して一週間が過ぎたころ、一人が電話してきた。
 
「そろそろ行こうかと思うんだけど、どう?」
 
「絶対だめ。やめといた方が良い」
 
 
 
「口コミも当てになれへんなあ」
 
 二十年来の友人が溜息をついた。
 
          P1000321 
 
  第五章  T大病院へ
 
      一  炎症が酷いので骨シンチで検査        
 
 
 もう絶対、歯医者には行きたくない。このまま、この痛みをじっと耐えよう。
 
 三日で耐えきれなくなった。
 
 T大病院の歯科を受診。
 
 今度の歯科医は三軒目の”ロマノ”とは対照的で、物腰の静かな優しい人だった。
 
「歯の痛いのは我慢できないですよね。解ります。解ります」
 
 その言葉だけで痛みが和らぐ。
 
 歯一本ずつのレントゲン写真と、上下すべての歯のレントゲン写真“パノラマ”というの
 
を撮る。
 
「神経を取る時、深く削り過ぎて歯根膜を貫通していますね。削り出すと、ついつい奥へ奥へ
 
深く入ってしまうのですよ。炎症がひどいです。骨シンチという検査をします」
 
「痛みは、どうなるのでしょうか」
 
「今の痛みは、炎症がひどいのと、二週間に七回も歯の神経を深く削るような
 
荒治療のためです。刺激し過ぎです。このまま、しばらく、なにもしないで、
 
そっとしておくのが良いですよ」
 
 歯はまったく触らず、鎮痛剤と抗炎症剤を処方してくれた。
 
“骨シンチ”とは、炎症の状態を調べるものらしい。検査の三、四時間前に薬を注射、
 
薬が全身に行き届いたらドームの中に横たわる。レントゲン写真を撮る。炎症のあるところ
 
が判る。
 
 歯の神経は歯根の先を出て、歯を包む歯根膜を通り抜け、歯槽骨の中へと入り、脳まで
 
続いている。骨の中には骨髄液が流れ全身を巡っている。深く骨から骨髄まで炎症が
 
拡がると、菌が骨髄液に乗って全身に感染する。一大事である。そういうことらしい。
 
 骨シンチをすると聞いた時、癌を疑っているのかとドキッとした。父が骨の癌を骨シンチで
 
調べたことがある。たかが虫歯でこんなに拗れるのは、他になにか原因があっても、
 
おかしくないかもしれない。そう思い始めていた。
 
 骨髄に届く炎症にしても癌にしても、検査結果待ちの二週間、落ち着かない。
 
 なにも手に付かない。
 
 歯は痛い。
 
 それにしても、あの”ロマノ”、麻酔もなしに神経を直接、深くまで削っていた。さほどの炎症
 
でもなかったのを、こんなにまで悪化させた。
 
 なにが「あんた痛がりや」だ。
 
 あの痛さで拷問の存在する意味が理解できた。安楽死の意義も納得できる。人は限度を
 
超える肉体的苦痛に耐えるようには出来ていない。
 
 怒りがおさまらない。
 
 それにもまして、なんということをするのかと恐ろしかった。
 
 鳥肌が立ち、冷たい汗が肌をつたう怖さを思い出す。
 
 
 
 検査結果が出た。炎症は骨髄までは届いていない。癌でもなかった。
 
「この炎症のひどさでは、奥の歯はもう駄目ですね。抜いてインプラントにしたらどうですか。
 
炎症が治るまで少なくとも三、四カ月はかかります。どの程度まで治るかも判りませんしね」
 
 インプラントは怖かった。アレルギー体質の私だ。また、なにが起こるか分からない。
 
すでに一年近くも歯医者通いをしている。あと三、四カ月なら待っても良い。
 
「インプラントにしないのなら開業医で大丈夫でしょう。経過を知っている人がいいですね。
 
三人の歯医者の中から選んで下さい」
 
「他の歯医者では駄目ですか」
 
「ええ、選んで下さい」
 
 一軒目は明らかに藪だ。三軒目は、あの痛さとあの態度を思い出すだけで怖くて泣き
 
そうになる。絶対に行きたくない。二軒目しか残らない。義歯の細工は上手ではないが、
 
歯の治療なら大丈夫だろう。
 
 二軒目宛に紹介状を書いてもらった。
 
        P1000344  
                                             
                                                          つづく                                                         
                                                  
広告
カテゴリー: 健康 パーマリンク

歯科治療8年の苦労ばなし 3 への2件のフィードバック

  1. Unknown より:

    凄い歯医者が、いるもんですねぇ、世間には。
    歯医者って、医者の仲でも、程度が悪いのかなぁ?
    それにしても、3件目の歯医者は許せないですね。
    技術もさることながら、人間性も劣ります。
    もうここまでで白い花サンは充分辛い眼にあっているので、この先は読むのが恐ろしいです。
     
    インプラントっていう言葉は聞いたことあるけど、スプリントって初耳です。
    今後の歯医者通い(したくないけど)に備えて、いろいろ学ばせてもらいます。
     

  2. 白い花 より:

    まだまだ、これは序の口でした。
     
    スプリントというのは、マウスピースによく似ていますが、ちょっと違います。
    この段階では、私もまだ自分自身で付けたことがなく、詳しいことは知りませんでした。
    実際に私が付けるようになった段階で、説明を入れたのですが・・・
    少し待ってくださいね。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

w

%s と連携中