歯科治療8年の苦労ばなし 6

      
                 
 
でも、お昼はまだクーラーなしです。
 
で、というわけでもないのですが、今回は土曜日になってしまいました。
 
 金曜日は、左首の筋肉の緊張を解くためと、
 
右足の股関節の位置、体の全体の姿勢矯正のために
 
フィットネスクラブでパーソナルトレーナーについています。
 
それで、姿勢がずいぶん良くなってきました。
 
腰のあたりで脊椎の神経が圧迫されて脚に来るというのが軽くなるようです。
 
今週からは、背中の筋肉の強化を目指しています。
 
そうすると、胸を張って、息が楽になるらしいのです。
 
喉の違和感が小さくなることを期待して、頑張ります。
 
スプリントの調子は一進一退という感じです。
 
私の主観的、願望的な見方では、
 
すべて良い方に向いている、悪くはなっていないということでしょうか。
 
 今日は、第7章、4軒目の歯医者の後半です。
                
               
          「歯科巡歴の記ー蟻地獄に落ちた」
    
    第七章  四軒目の歯医者
    
                二  泣き面に臼の底     
 
 
 お正月休みが終わって最初の診察日。
 
 去年の暮れに型取りをした右下二本、親知らずとその横の奥歯に詰め物をする。それで、右下
 
の歯は 無事終了のはず。去年の秋から四カ月が過ぎているから、左下ブリッジの脚になる歯の
 
治療も、最初の予定より遅れたにしろ、そろそろ終わるだろう。
 
 新年の新たな気分で再出発。ちょっとお洒落をして、取り返しの付かないことは忘れ、肩の力を
 
抜いて歯医者へ行こう。気分を取り直して出かけた。 
 
 
 まただ! もう信じられない。開いた口が塞がらない。
 
「これを入れます」
 
 これで良いのかしら。できた詰め物を見て心配になる。
 
 石膏で作った模型の二本の歯の真ん中に、セラミックとプラスティックの混合物だという三万円の
 
詰め物が嵌め込まれていた。その詰め物が臼の底のように凹んで納まっているのだ。
 
 まさか、こんなふうに詰めるわけではないだろう。食べ物が臼の底に詰まってしまう。
 
確かめなければ。
 
 さっさと歯医者が作業を始めてしまった。
 
 ここで確認を取れば良かった。後悔するが後の祭り。
 
 歯医者の治療で、いつも思う。患者は口を開け、道具が中に入っている。なにか言いたくても、
 
なかなか言うチャンスがない。歯医者は、手は塞がっていても口は空いている。色々説明はして
 
くれるが、喋る一方だ。患者の返事を必要とは思っていないのだろうか。患者の置かれている
 
状態を理解していないのだろうか。
 
 このときも、すでに口の中に道具が入っていて尋ねるチャンスがなかった。
 
 接着剤を詰めればちょうど良い高さになるのだろうか。この歯医者は不器用だから接着剤を
 
たくさん使うのだろうか。
 
 削ったとき同様、いやに時間が掛かる。すでに削ってある二本の歯の凹みに詰めればいいだ
 
けだ。しかし、何度も何度も詰め物だけでなく本物の歯まで削る。
 
 型が上手く合わないのだろうか。ここの技工士は下手なのだろうか。
 
 やっと詰め物を入れ終えた。それでも、まだ、なかなか終わらない。さらに何度も削っている。
 
ひどく痛い。手を滑らせては歯茎に器具を突き刺す。1時間以上もかかったような気がした。
 
 やれやれ。うがいをする。
 
 白い洗口台が血で真っ赤に染まった。詰めるだけでこんなに出血するだろうか。
 
 歯茎はよほど傷だらけなのか、消毒薬をたっぷり付けてくれた。
 
 帰りの地下鉄の中、痛くてたまらない。どうして詰めるだけで、後までこんなに痛いのだ。あんな
 
に削って時間がかかるのだ。
 
 帰宅後、鏡を見て愕然とする。時間がかかった理由が解った。詰め物が低く臼のように凹むの
 
で、臼の底に高さを合わせて周りの部分の歯を削っていたのだ。
 
思ってもいなかった。私の想像力を遙かに超えている。
 
 溜息が出た。
 
 二本の歯は全体が低くなった。上の歯と噛み合わせようとしても、上下の歯の間に隙間ができ
 
て届かない。左側はすでに噛み合う奥歯はない。これで右側の奥歯も、噛める歯は二軒目で作っ
 
た例の金歯だけになってしまった。
 
 歯茎も思った通り傷だらけ。痛くて口の右側には食べ物も飲み物も入れられない。
 
 一週間ほどして歯茎の傷は治った。しかし、歯が低いのは、治りはしない。
 
 次の診察日。
 
「この二本の歯、全体が削られて低くなっています。上下噛み合いません」
 
「大丈夫ですよ。このまま使って下さい」
 
 歯医者はにこにこと穏やかに言った。
 
 想像を越える事態に、すっかり気が滅入っている。こんな気楽そうに返答されると、それ以上は
 
言う気もしなくなる。
 
 第一、この歯医者に作り直してもらっても、ますます悪くなるだけだ。きちんと直してくれるとは、
 
とても思えない。下手にいじくって、もっと拗らせ、神経を抜くようなことにでもなったら、いよいよ
 
大変だ。痛みはない。これはこのままにしよう。左下のブリッジの脚になる歯の治療が終われば、
 
すぐ他に替わろう。根の痛みは去年の暮れからほとんど感じない。治療はすぐ完了するだろう。
 
もう少しの辛抱だ。
 
        P1000417
         
      
      三  信頼度ゼロパーセント         
 
 
 右下の奥歯二本が低くなり、これで、食べ物を噛む両奥歯が満足なものではなくなった。
 
そう落胆していた。このとき、それだけでは済まないなどと考える術もなかった。現実は私の予想
 
をいつも超えている。
 
 例の金歯以外、奥歯は左右とも噛み合う歯はない。残りの噛み合う歯は前歯だけだ。という事
 
は、詰めるにしろ、被せるにしろ、ブリッジを作るにしろ、高さの基準になる両奥歯がないに等し
 
い、ということだ。治療は、ますます複雑で困難なものになってしまった。
 
 そのうえ、踏んだり蹴ったりとはこのことだ。虫歯だからと親不知の詰め物を自費で仕直したの
 
に、詰めた金属の横に茶色の虫歯の部分が、まだ残っていた。
 
 まだまだある。奥歯が低くなると顎関節が落ちてきて耳の下あたりが痛くなる。四軒目の歯医者
 
は大学では顎関節の専門家だったと聞いていた。それなのに、奥歯を低くしてしまったらどういう
 
事態になるのか判らなかったのだろうか。
 
 朝、右の首筋が凝るようになった。枕が合わないのかと調節してみたが効果はない。毎朝、
 
葛根湯を飲まずにはいられない。右の奥歯が低くなり噛み合せが悪くなったせいだろうか。
 
「朝、首が凝ってるの。枕が合わないのかな。歯を治療してからのような気がするのよ」
 
 友人二人の話だ。やっぱりそうなのか。
 
 セメントで留めずに乗せていただけの左のブリッジも外れるようになった。
 
「最近、左のブリッジが、すぐ外れます。右側が低くなって左側が浮くからでしょうか」
 
「そうですね。じゃあ、左の前の歯は治っていますから、中にポールを立てましょう」
 
 治療中の一本の歯に細工して、それにブリッジを引っかけ、外れないようにしてくれた。
 
 次の診察日。
 
 ブリッジを外そうとするが外れない。歯医者は力任せに引っ張って外した。
 
「なんやこれ、取れへんな。歯に食っ付いてる」
 
 前回、歯の根に立てたポールまで、むりやり引き抜いた。若い衛生士は返答に困った顔で黙っ
 
て見ている。歯医者は自分が前回した処置をすっかり忘れているようだ。カルテに記録していない
 
のだろうか。治療後、今度はブリッジの方へポールを付けた。
 
 むりやりポールを引き抜いたせいか、また前の歯が痛くなる。
 
「この奥の歯はどうかな」
 
 はあ?
 
 どうしてそんなことをしたのか、まったく解せない。歯医者は治療完了目前の、もう一本の奥の
 
歯をピンセットで挟んだ。激痛がする。レントゲンを撮る。ドリルで削る。いつも素早い。
 
 奥の歯も、また痛くなった。二本とも治療のやり直し。また鎮痛剤の御世話になる。
 
 ポールの御陰でブリッジは外れなくなった。
 
 しかし、ブリッジと上の歯は巧く噛み合わないままだ。ブリッジを上手に嵌めないと、
 
上下の歯とも痛みが増す。ポールを立てる以前は、ブリッジはセメントで固定されていなかった
 
ので、痛いときは自分で自由に嵌め直しができた。
 
「先生、きちんとブリッジが、はまっていません」
 
 ブリッジと歯の間からはみ出たセメントの掃除をした衛生士が、歯医者に伝えてくれた。
 
「きちんと入っていますよ」
 
「ずれて、痛いのですが」
 
 浮いて、ずれているのが分からないのか。
 
「これくらいなら大丈夫です」
 
 歯医者がにっこり笑って答えた。
 
 あ~あ。
 
 衛生士の諦め顔を見て、私もそれ以上言う気力が失せた。当然言えることが、ここまで落胆して
 
いると言えなくなる。
 
 もともとの痛みに加え、ブリッジに押されて痛みが増す。鎮痛剤の量が増える。
 
 一週間後、歯茎全体が上下とも赤く腫れ、出血していた。
 
 ブリッジの納まりが悪いせいだろうか。
 
「医者との信頼関係が悪くなると、すぐこうなるのです」
 
 衛生士がなんの迷いもなく言い放った。
 
 ここでは、ますます拗れるばかりだ。左下ブリッジの脚二本の歯の治療さへ終われば、すぐに
 
他の歯医者に替わろう。それまで、絶対に、これ以上他の歯は触られないよう気を付けなければ
 
ならない。
 
 初診から半年はとっくに過ぎている。最初の話では、三カ月で治療は終わるはずだが、なかなか
 
終わらず、他に良い歯医者も見つからず、もうどうして良いか分からない。八方塞がりで、新しい
 
行動に踏み出せない。心まで縛られ硬直して突っ立ったままだ。
 
 ある科学雑誌に “持続する痛みは前頭葉に作用し、判断能力を低下させる” という調査レポ
 
ー トが載っていた。まったくだ。
 
 
 桜のつぼみが膨らむころ。
 
 奥の歯の痛みは、再び和らいできた。治療を受けた日が一番痛く、しだいに薄れ、次の治療日
 
の前日には、すっかり消える。そういう状態に、またなった。
 
「何もしないでほっておいた方が、調子が良さそうですから、三週間このままにしておきましょう」
 
 三週間を二度、六週間、そのままにしていた。すっかり痛みが消えた。
 
「先生、奥の歯は、すっかり治ったようです」
 
 弾んだ声で報告した。ここで我慢した甲斐があった。嬉しくて、ほっとした。
 
 これで他の歯医者に移れる。そこで、形の良いブリッジを作れる。他の歯もやり直してもらえる。
 
「ああ、そうですか」
 
 歯医者はのんびりとそう言って、口を覗き込んだ。
 
 いきなり、やっと治った歯の根をドリルで削った。まさかまた削るとは思ってもいなかった。
 
一軒目の歯医者でドリルを舌に突き刺されて以来、治療中は目を閉じている。目に突き刺された
 
ら大変だ。ときどき薄目を開け様子を窺ったりはしていた。しかし、嬉しくて、すっかり気を抜いて
 
いた。
 
 また痛くなった。
 
「このまま薬を詰めて、しばらく置いておきましよう。次回からは、反対側の歯茎の痩せたところに
 
プラスティックを貼っていきます。」
 
 どうしてまた削ってしまったのか。尋ねる気もしない。
 
 反対側の治療なんて、とんでもない。水が沁みたり知覚過敏になっている歯茎との境の歯の
 
部分を削って、プラスティックを貼るという。今までの技術を見ていたら、そんな微妙なところを
 
上手に削れるとは到底思えなかった。
 
 次の予約日に来るわけにはいかない。詰めた薬は三週間保つ。そのあいだに他の歯医者を
 
絶対に探さなければ。
 
「この歯、痛くありませんか」
 
 二本のうちのまだ削っていない前の一本を金属の棒で叩いた。
 
 私の心の中が読めるのだろうか。この八カ月間、何度かそう感じた。患者をつなぎ止めておく
 
ために治療が途切れないようにしているのでは。
 
「いいえ~」
 
 笑顔で答えた。
 
 本当は、ポールを無理やり抜かれてから、前の歯はなんとなくジグジグと痛くて、叩くと鋭角的
 
な痛みがあった。しかし痛いと言えば削られる。削って治療を始めたら、この歯に入れる薬は
 
一週間しか保たないかも知れない。一週間で他の歯医者が見つからなければ、またここへ来なけ
 
ればならない。
 
 これ以上、何もしてもらう気はない。外科的技術が下手、義歯の細工も下手、事前の説明もなし
 
に歯を削る、保険でするのか自費でするのか事前に承諾も取らない。この歯医者を一パーセ ント
 
も信頼できなくなっていた。
 
 なにより私が歯医者をここまで信頼できないで通うこと自体が、間違いだ。今まで通い続けたの
 
が馬鹿なのだ。
 
 会計で支払いを待っていた。
 
「しばらく前に作って頂いた入れ歯、本当に上手に作って頂いたのですが…、合わなくて、
 
嵌めると痛いので外したままになっていました。やっぱり、もう一度調整し直して頂かないと…」
 
 今にも泣きそうだった。初老の女の人が必死に訴えている。以前にも調整を頼んだが、上手く
 
いかなかったのだろう。勇気を出してまた来た。今度こそは、きちんと直して欲しい。女の人の
 
表情は真剣そのものだった。 
 
「しばらく外したままですと、もう合わないので、新しく作り直さないといけないかもしれません。
 
いいですか」
 
 受け付けの応対は、あまりにも冷たく聞こえた。
 
「えっ!」
 
 女の人は緊張した表情で、下町風の装いの肩を落とした。そんな酷い! 心の泣き声が私には
 
聞こえる。助け船を出したい思いだ。どんな入れ歯なのだろう。高価な物だろうに。
 
 
 転院するぞ!
 
 この八カ月は、いったい何だったのか。最初の一カ月で転院すれば良かったのだ。
 
“持続する痛みは判断力を鈍らせる” これは間違いない。
 
                  つづく                                                  
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歯科治療8年の苦労ばなし 6 への3件のフィードバック

  1. Tamaki より:

    白い花さん (^ー^)ノドモ
    やっぱり 歯医者さんって 工事屋 さん だったんですね 改めて 再認識 しちゃいました。

  2. じぃじ より:

    歯医者は医者かなぁーーーと思うことありますよね
    治療中出血がひどく止血しても止まらなかったときの
    あわてた様子
    まともに止血もせず、治療を終え
    「そのうち、止まりますから」だと
    即、歯医者を変えた

  3. 白い花 より:

    じぃじさん、Tamakiさん、読んで下さって有り難うございます。
    本当に歯医者では苦労しています。
    これを読んでメールを下さった方(たぶん歯医者さん)が仰るには、まともな歯医者は1000軒に1軒とか。
    絶望的になります。

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