歯科治療8年の苦労ばなし 8

      
                
 上の写真、なんだと思います。
 
お墓ですって。聞いてびっくりしました。色々お墓もあるものですね。
 
 スプリント、顎、歯の調子はまずまずです。
 
回復のあまりの早さに、信じ難い気持ちです。
 
糠喜びになるのが怖いので、喜びすぎないように、気持ちを抑えています。
 
先週、歯医者からの帰り道、あまりの嬉しさに、
 
”バンザーイ”と友人にメールしてしまいました。
 
 今回は、第八章、五軒目の歯医者の続きです。
 
       
                   
      「 歯科巡歴の記ー蟻地獄に落ちた」
 
 第八章  五軒目の歯医者
   
        三     変人二人            
 
 ブリッジの脚になる歯二本の一本、第二大臼歯は、歯根膜に穴が開いて二カ所貫通している。
 
出血している。神経がまだ残っている。どおりで痛いはずだ。
 
 もう一本の第二小臼歯は、鋭くはないが腫れぼったいじくじくした痛みがあった。治まっていた
 
のに、四軒目の歯医者がポールをむりやり抜いてからまた始まった。この歯はいったいどうなっ
 
いるのだろう。
 
 歯医者はレントゲン写真を見せて説明してくれた。
 
「第二小臼歯には、脱脂綿、古い薬、レントゲン不透過物が残っています」
 
 根の部分が歪な形で膨らんでいる。素人の私が見ても、一目で、ぐしゃぐしゃで、けったいやな
 
と思う形をしていた。どうしてこの五軒目の歯医者は、初診の日に気が付かなかったのだろう。
 
あの日は同じ写真を見て、なにも異常はないと言った。
 
 治療一日目は、二本の歯を調べ、全部の歯の歯茎のエアーポケットの深さを調べて記録し、
 
歯石を取って終わった。
 
 一日目に歯石を取るなんて。今までの歯医者は治療の目途が付いてから歯石を取った。それに
 
前の歯医者で歯石を取ったばかりで、取るほどの歯石はないはず。お金になることは取り敢えず
 
するということだろうか。
 
  うがいを終え、治療台から立ち上がろうとしたときだった。
 
「このブリッジは正しい位置に入っていないので外します。ポールをブリッジの方に付けるのも
 
安定が悪くて良くないです。普通は歯の方に付けます。こんなものを嵌めておくと、かえって
 
歯茎に悪いです」
 
「外した後は、どうするのですか」
 
「そのままです」
 
「えっ!?」
 
 以前の歯医者では違う説明を受けていた。
 
 治療期間が長く、歯のない状態が続くと悪い影響がある。空いたところに隣の歯が倒れ込む。
 
下の歯がないと上の歯が落ちてくる。その予防の為に仮歯を入れておかなければならない。
 
そう言って、治療を始めて八カ月頃、二軒目の歯医者がプラスティックの仮歯のブリッジを作って
 
くれた。
 
 今は、二軒目で金属とプラスティックを組み合わせて作ってくれた本物のブリッジに、四軒目が
 
中にポールを立てたものが嵌まっている。
 
 それなのに、五軒目の歯医者は外して捨ててしまった。これで本当に良いのだろうか。
 
 帰り際に念を押した。
 
「外したままで、本当に大丈夫ですか?」
 
「あなた! 何を聞いていたの! 院長の説明をきちんと聞いていなかったの!」
 
 えっ!?
 
「院長は、そのままで良いと言ったでしょう! 聞いてなかったの!」
 
 金髪を揺らして大きなマスクが高飛車に怒鳴りつけた。思いもかけない対応に驚いて言葉も
 
ない。こんな剣幕で他人に怒鳴られるのは初めてだ。まして開業医の受付で、こんな言い方を
 
されることは絶対にないだろう。
 
「ああ、大丈夫ですよ」
 
 歯医者が一言添えた。
 
「わかりました」
 
 やっと声を振り絞る。聞いていた以上に奥さんは、かなりのものだ。でも、二本の歯の治療に
 
目途が付いた。奥さんの変人振りには我慢しよう。
 
「後に残さないし、悪い人ではないから」
 
 元衛生士が電話の向こうで言った。
 
 
 
 次の治療日が来た。
 
 第二大臼歯の治療の最中だった。細い根の穴に治療器具が、なかなか入らない。
 
「チェッ! クソッ!」
 
 チャッリーン。ガッチャーン。金属音が響く。突然、歯医者が持っていた治療器具を床に叩き付け
 
たのだ。傍らの治療器具を置いてあるトレーから荒々しく二本目を持ち上げる。また巧くいかない。
 
何度も同じところを器具で突く。苛立ちが鋭い器具の先からピリピリと伝わる。周りの空気まで
 
癇癪で尖った。
 
「チェッ!」
 
 腕を大きく振り上げて、二本目の治療器具も床に叩き付けた。
 
 チャッリーン、ガッチャーン、ガッチャーン。
 
 投げつけられた器具は、床から跳ね返って衝立の足に当たり、さらに跳ね返って、隣のもう一つ
 
診察台の足にぶち当たった。
 
 診察台の上で口を開けたまま、私は腰を抜かさんばかりに仰天した。
 
 古くて、あるいは手入れが悪くて、シャープな切れ味のない器具が入っていたのか。それは器具
 
準備する奥さんの責任だという抗議の意思表示なのか。治療が巧くいかないことへの単なる
 
苛立ちなのか。なにも床に投げつけなくてもトレーに置けばいいだろう。
 
 治療器具を床に投げつける歯医者は初めてだった。
 
 奥さんだけでなく、ご主人も相当の変人なのだ。
 
             
                        
 
     四  神経を殺す薬を舌に注入
 
 やっと第二大臼歯の根の穴の掃除が終わった。
 
「穴に薬を詰めます。前の先生は弱い薬しか使っていなかったようですが、今度は、強い薬を
 
使います。しばらく痛さが増しますが心配いりません。治る為の体の反応です」
 
 針が先に付いた細長い薬のカプセルをピンセットで挟む。口の上に持ってくる。
 
「しまった!」
 
 舌に針が突き刺さった。舌の真ん中、中央より少し左側にブスッと垂直に刺さった。針の付いた
 
薬のカプセルを取り落としてしまったのだ。
 
「ちょっと、そのまま動かないで待っていてください! 抜く道具を取ってきます!」
 
 慌てた歯医者は足早に奥の部屋へ行ってしまった。早くしないと薬が舌に入ってしまう。
 
「お待たせしました」
 
 手にしたピンセットで、ゆっくりと慎重に抜いた。ピンセットなら、わざわざ取りに行かなくても、
 
もともと手に持っていたではないか。
 
 カプセルは空になっていた。薬は全部、舌に注射されてしまったのだ。
 
「しばらく違和感があって変かもしれませんが、大丈夫、心配ないですから」
 
 しかし、あの薬は神経を殺す薬。舌の神経はどうなるのだろう。本当に大丈夫なのか。
 
 やっと治療が終わった。座って口を開けていただけの私も、ぐったりと疲れていた。
 
 前回、歯石を取った後、奥歯の歯茎が腫れて痛くなり、まだ治らない。大丈夫なのかどうか診て
 
もらわなければと思っていた。が、そんなことを言う余裕はなかった。
 
 半日ほど舌は痺れたような感じだった。二、三日で違和感程度になった。
 
 一軒目の歯医者でも、歯石を取る時、衛生士が過って、動いたままのドリルを落とし舌に突き
 
刺した。本当についていない。こんなことが二度も起きるなんて。舌の機能に後遺症が残ることが
 
あるのだろうか。私の趣味であり特技は声を出すこと、舞台朗読なのだ。
 
 強い薬を入れた第二大臼歯は説明通り痛さが増した。
 
 次の予約は、三日後。消毒、薬の入れ替えは毎日でもした方が良いと言う。
 
 あのミスがあったからか、それ以後、治療は慎重で丁寧になった。
 
 しかし、歯の痛みはひどくなるばかり。治る兆しはまったくなかった。
 
             
 
    
      五  新種の痛みと治療中断通告        
 
 
「脱脂綿、古い薬、レントゲン不透過物を取って、綺麗に掃除をし、薬を詰直しました」
 
 第二小臼歯のレントゲン写真を見せながら説明してくれた。
 
「レントゲン不透過物とは、いったいなにですか。以前にポールを歯の中に立てていたのですが、
 
その接着剤の残りか何かですか」
 
「いえ、違います」
 
「ではなんですか」
 
「レントゲン不透過物です」
 
「だからレントゲン不透過物とは、具体的になんなのですか」
 
「ただのレントゲン不透過物です」
 
 あー。
 
 これ以上尋ねても無駄のようだ。ここまで尋ねる私もかなりしつこいが、この歯医者は馬鹿か、
 
あるいは誤魔化すのが下手なのか。それで前の歯医者に義理立てしているつもりなのか。
 
 余計なものが取れて綺麗になったのだから良しとしよう。前回、聞けなかった歯茎の痛みのこと
 
を言い忘れた。
 
 電車に揺られながら考えた。
 
 第二大臼歯はまだ痛いが、それは薬の反応で、しばらくすれば治まると説明を受けている。
 
第二小臼歯も、レントゲン不透過物とやらを取って、きちんと治療ができたようだ。いやなことは
 
あるが、歯の治療そのものは大筋では前に進んでいる。このまま様子を見よう。四日後に予約が
 
入っている。
 
 しかし、薬が効いた後に治まるはずの痛みは、いっこうに治まらない。もう一本の綺麗に掃除し
 
た歯も以前より痛みが増し、種類の違う痛みが加わった。
 
「二本とも痛みが治まりません。小臼歯の方は今までにない酸っぱいような、浮いたような痛みが
 
増えたのですが」
 
「おかしいですね」
 
 もう一度、ピッー、ピッーと音のする器械で第二大臼歯を調べた。
 
「歯根膜がもう一カ所貫通しています。もう一度治療をやり直します」
 
 また根の中を削り、消毒し、薬を入れた。
 
 もう一本の第二小臼歯は、まったくお手上げのようだった。レントゲン写真を見せて説明してくれた。
 
「こんなに綺麗に薬が入っているでしょう。痛くなる要素はまったくありません。酸っぱいような、
 
浮いたような痛みなんて聴いたことがありません」
 
「でも、そういう感じで痛いのです」
 
 この歯医者が治療した後で新たに出た痛みだ。治療時になにか原因になることをしたとしか思
 
えない。しかし、見せてもらったレントゲン写真で見る限り、素人に判る原因らしいものはなにも
 
っていない。薬の入った部分の影がくっきりと綺麗な輪郭を描き、見事だと褒めたいくらいだった。
 
「この歯も、念のため、もう一度、治療を仕直します」
 
 結局、二本とも治療をやり直すことになった。
 
 痛みは、この歯医者に来る以前よりも増していた。
 
 ここで他に替わっても訳が分からなくなるだけだろうか。どうしよう……。とにかく痛い。三日後
 
次の予約日にまた行くしかないのだろうか。
 
 その後、何度か治療しても、状態はまったく変らなかった。
 
 診察台に座って待っている。歯医者が後ろから近づいて来る。一言の挨拶もない。ブスッとした
 
まま、いきなり器具を口の上に持ってくる。こちらも無言で慌てて口を開ける。そんな診察が続い
 
た。治療が終わって口がきけるようになり質問をすると、説明とも弁解ともつかない話が長い。
 
三十分以上になることもある。
 
 もうこれは希望がない。この歯医者には解らないのだ。
 
 
 
「このままで、半年、様子を見て下さい。するべきことはしましたので……」
 
 会計を終えたとき、突然だった。
 
「えっ!?」
 
「痛みが治るか、さらに痛くなって我慢ができなくなったら、半年経たなくても、また来てください」
 
「はあ?」
 
「他に行かずに、うちへ来てくださいよ。僕はこの地域で一番腕が良いですから」
 
 まったく予期せぬ指示だった。いくらなんでも理不尽ではないか。
 
「でも……痛みはこのまま、仮歯も外したまま。それで半年ですか?」
 
「あなたね! 院長の言うことを、きちんと聞いていたの! 言った通りよ!」
 
「……」
 
 地下鉄にどうして乗ったのかも記憶にない。気が付いたら我が家の食卓の椅子に座っていた。
 
白い壁をじっと見つめていた。両手で、両顎を押さえ痛い歯を抱かえて。
 
 どうしたら良いのだろう。
 
                                つづく     
                                                     
                                                   
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歯科治療8年の苦労ばなし 8 への10件のフィードバック

  1. 乙女 より:

    良いお医者さんもいっぱいいるのに、
    今迄のを読みましたが酷いですねぇ~。
     
    元々はどこが悪かったのですか?
    快方に向かっているとの事で良かったですね(^0^)/^^^
     

  2. 白い花 より:

    本当に、運が悪かったのでしょうね。”事実は小説よりも奇なり”です。
    元々は、第1話、2話に書いていますが、
    歯を磨いたとき虫歯の味がしたので、
    柄にもなく早い目にと歯医者に行ったのが始まりです。

  3. 洋子 より:

    色んな歯科医さんがいるものなのですね。
    読んでいて怖いな、と思いました。
    受けてみないと実態はわからないから困りものですね。

  4. Tamaki より:

    白い花さん (^ー^)ノオッハヨウ
    歯医者さん の 先生 また 他の お医者様 の 語る 話 総て 自宅で 調べ直さないと
    いけない 時代に 成ってしまった ようですね 私は 残念 で たまりません (o^-\’)b

  5. Misa より:

    こんにちは。
    そ、壮絶です・・・それしか言いようがないですね。
    歯医者さんって、本当にたくさんあって、中に入るまでどんな雰囲気かもよくわからないし、
    治療法もその歯医者さんによってそんなに違うのなら、一体どれを信じていいのか・・・
    受け身でしかないので困りますよね。
    いい方向に向かえばいいのですが・・・お大事になさってください。

  6. 白い花 より:

    洋子さん
     そうなんですよね。
    治療をしてもらわないと、腕が分からないし。
    話だけ、まずしっかりと聞いてからというのも、何となくできなくて。
    行くともう、なにかの治療をしますよね。
    歯医者の梯子はしにくいです。
    でも、3軒くらい話だけ聞きに行って、一番良さそうなところにしたという知人もいらっしゃったので、
    賢い人は違うと、感心しました。
     

  7. 白い花 より:

    Tamakiさん
     だんだん医者不信になってきます。
    良いお医者さんも、たくさんいらっしゃるのでしょうが、
    どうして見つけることができるのでしょう。
     
     それに、まだまだ、今の科学レベルでは分からないこともあるでしょうし、学説も色々で、
    しかも、最前線の学説や治療方法を、すべての歯科医が知っているわけではないでしょうし。
    あー!

  8. 白い花 より:

    Misaさん
     そうでしょう!
    私もこれが頂点だと思っていたのですが、
    これは治療開始2年目のことで、まだまだ次々と色々なことがあって・・・
    8年目です(涙、涙、涙)
    やっと最近、良い方向に向かい出しました。
    バンザーイ! 三唱!

  9. ガオゾン より:

    白い花さん、お邪魔します。
    たかが歯と思ってましたが、本当に怖いですね。
    神経・骨髄までつながってるんですね。
    僕は、前歯3本が差し歯、あと数本はかぶせてあるんですが、
    この前とうとう奥歯の金属が取れて(しかも飲み込んでしまった)
    どうしようも無く、近所の大学が開設している病院の歯医者に行きました。
    できたばかりできれいでしたが、先生1人で看護し無し、その場で
    削って、かぶせてハイ終わり、50元でした。
    次に日本へ休暇でかえった再検査してもらおうと思ってます。(来年の旧正か~)

  10. 白い花 より:

    ガオゾンさん
     
    本当にそうなんですよ。
    たかが歯、されど歯です。
     
    でも、あまり怖がらない下さいね。
    こんなことになる人は、滅多にいないでしょうから。

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