歯科治療8年の苦労ばなし  13

          
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  イシク・クルでは、ヨットのような小船(動力はモーター)をチャーター、
 
対岸は見えない海のように大きな青い湖へ繰り出しました。
 
両岸には、遙か向こうに屏風のように連なる天山山脈が万年雪を白く輝かせ、
 
湖上は、私たちの船だけ。壮大な静けさを満喫しました。
 
(天山山脈は一つの山脈ではなく複数の山脈の総称です)
 
 歯の方は、月曜日に、低すぎるということを歯科医も理解してくれました。
 
でも、今、高く作り替えることは出来ないので、スプリントを出来る限り長時間
 
付けて、不都合をカバーするようにという指示でした。あー・・・
 
 今回は、第十章の三 ”痛いのに外してくれない” からです。   
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             「歯科巡歴の記ー蟻地獄に落ちた」
 
   第十章  しぶしぶ五軒目の歯医者へ
    
        三  痛いのに外してくれない        
 
 
 五軒目の歯医者のお盆休みが、やっと終わった。
 
 外してもらえる! この痛みも今日までだ! 歯医者へ飛んで行った。
 
 診察台に座って待つ。後ろから近づいて来た歯医者が、例のごとく挨拶もなしに、いきなり
 
口の中に道具を入れて歯を見る。この態度には慣れっこだ。歯の状態を見てもらってから
 
二週間の経過報告をしよう。
 
「ブリッジの歯三本の並びが真っ直ぐ過ぎて、形が悪いですが、本物はカーブを付けて周りの
 
歯並びと合う自然な形のものにします。下顎が左にずれ過ぎの噛み合わせも、
 
そうならないように、そのとき、きちんと直します。
 
今日は、三本の仮歯とも、まだ低いようなので高くします」
 
 えっ! 
 
 仮歯は形なども変だったが、前に仮歯の型を取るとき、私が懸念していたように、
 
下顎が左にずれ過ぎた噛み合わせになっていた。先日、T大病院へ行ったとき、K歯科医が
 
一目で、それらのことを指摘した。
 
 K歯科医へ行ったことすら、一言も話をしていない。K歯科医から連絡があったのだろう。
 
「仮歯を高くします」
 
 さっさと作業に取り掛かかった。トレーの上で捏ねたプラスティックの粘土のようなものを
 
ブリッジの仮歯の上にドサッと積み上げる。仮歯を外さないで、口の中で作業をするようだ。
 
 この仮歯は痛いから一度外して欲しいと言いたい。しかし、唾液が口の奥の方に溜まって
 
声が出せない。仮歯の上に積み上げられた固まりが崩れ、喉の奥に落ち込んでしまいそう
 
だった。
 
「上下の歯を噛み合わせてください」
 
 諦めて、歯医者の指示通り上下の歯を噛み合わせる。
 
「次は、前後左右に噛み合わせを、ずらせてください」
 
 ずらそうとする。上下の歯とも粘土状のものに、すっぽり埋もれビクとも動かない。
 
「動かない? ああそうか。ロック状態になってるのか。口を開けてください」
 
 粘土に埋もれた歯を上下に開くには力がいる。粘土が歯に食っ付いて引っ張る。
 
剥がれない。上下の歯茎、顎に意識を集中して、思いっきり力を入れた。
 
 やっと開いた。
 
 歯医者は積み上げた粘土状のものを削り取って、仮歯を低くした。まだ歯が粘土の凹みに
 
嵌り込む。こんなままで良いのだろうか。
 
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「はい、うがいして」
 
 やっと、口がきけるようになった。
 
「この二週間、痛くて、鎮痛剤も効かなくて本当に大変でした。仮歯が大きすぎて痛いのです。
 
一度外してください」
 
「そんな必要はないです」
 
「全身の筋肉が緊張して顔の左右の大きさまで違っています。右側よりも、左側の方の緊張
 
が強くて、顔左半分が細く小さくなっていますでしょう?」
 
 私の顔を斜めにチラと見て言った。
 
「これは開業医では難しいなあ。大学病院の補綴科でないと無理でしょうね。
 
K先生に頼もうと思ったのに、そっちでやって、できると言われて……」
 
 K歯科医に開業医でもできると言われ、できないと言うのはプライドが許さず、
 
仕方なくしている。渋々格好だけのようだ。患者が勝手に、どこかへ替わってくれないかなと
 
いう感じだった。
 
 無理だと思うのなら、K歯科医に自分はできないと断るべきだ。あるいは、他の病院を紹介
 
するべきだろう。
 
 ここでは駄目だ。治らない。
 
 でも、この仮歯だけは外してもらわなければ。それくらいは簡単にできるだろう。
 
「顔の形、歪んでいますでしょう。痛いですし、一度、外してください」
 
「……」
  
 私の言葉が耳に届いていないかのように、全く取り合う気配もない。治療台から離れ、
 
店仕舞いしてしまった。
 
 あー。
 
 痛さを堪えて二週間も待ったのに、なにも期待できない。落胆と痛みで言葉もなかった。
 
恥ずかしげもなく態度を豹変させ、今また誇らしげに意地悪く踏ん反り返る金髪と特大マスク
 
を見ると、この場に自分自身が居合わせ、この状況に所属するのも忌まわしい。
 
 一刻も早く、この場を逃れたかった。
                                              
                         P1000468 
                                                                 
 やっと家に辿り着いた。食卓の椅子に腰かけて白い壁を見詰めていた。白い壁が滲む。
 
白い霞になる。シーンと深いこだまが追いかけてきた。
 
 この先、一体どうなるのだろう。どうすれば良いのだろう。
 
                           
 
 三カ月通って、もともと痛かった奥歯二本の痛みが増し、左右の顎関節も痛くなり、筋肉まで
 
攣って顔の形が歪んでしまった。舌に神経を殺す薬の入った注射針を刺され、舌半分が痺れ
 
たこともあった。歯石を取るのに深く削りすぎ、歯茎の一部が腫れて痛いままだ。歯ブラシが
 
触るたび飛び上がる。
 
 これではまだ足りないのか。大きすぎる仮歯を嵌めたままの二週間の間に、取り返しの
 
つかないことが起き始めていた。その後も、ますます酷くなっていった。
 
 仮歯は上の歯列とは、噛み合わせがずれた位置に入っていたのだが、一週間もしないで、
 
先ず、左上犬歯が前方上へ動きはじめた。そう見えたが、それは奥の小臼歯二本が内側へ
 
後ずさりした状態なのかもしれない。その次に、上の前歯二本が前に飛び出た。
 
その両隣の歯は逆に口の内側に傾いた。右上の奥歯も口の内側、舌のある方に倒れ込んで
 
いった。
 
 大きすぎる仮歯は左下だったのに、上の歯が、外に飛び出る歯、内に凹む歯というふうに
 
ガクガクの並びに歪んでいったのだ。
                                                              
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                                            つづく
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歯科治療8年の苦労ばなし  13 への15件のフィードバック

  1. じばこ より:

    子供のころ、小さな虫歯を、削りけずり、駄目にしていったので
    恐怖の治療、実感します。
    今は、小さな虫歯はほっといておいたほうがいいのですってね。
    早くに治療が終わって、誉められてはんこを貰って、治療だらけ
    の歯になりました。半世紀前になるのか~

  2. Unknown より:

    白い花さん
    ほんとうに、どうなっているのでしょう
    なんてことでしょう!!
    歯の痛みは痛みの中で一番しんどいものだと
    いわれています。
    よく、辛抱されましたね。つくづく思います
    ところで、プライドだけは一人前ってところが悲しいです

  3. 乙女 より:

    患者の話に耳を傾けない医者は失格です。
    読んでいて歯科医に対し腹が立ち、
    こんな無責任な医者がいるのかと思うと怖いです^^;)
     
    歯は簡単に動いてしまうから、
    どんどんずれてしまいます。
    酷い話ですね(怒)
     

  4. 洋子 より:

    酷い目にあってしまいましたね・・・
    なんていい加減で酷い歯科がいたものでしょう。
    最後の方は怖い展開で・・苦難の道のりだったんですね。

  5. Tamaki より:

    白い花さんへ 貴方の書き込みで、私は今こんな事をしている場合では無いと気が付きました。
    之からは、お仕事最優先モードに切り替え闘って参ります、尚本日早朝に私のMSNスペースを自ら削除致しました事
    御報告させていただきます。

  6. 白い花 より:

    爺婆仔さん
    歯医者へ行ったばっかりに、よけいに悪くなると言うこともありますよね。
    最近は、昔のように小さな虫歯は削りませんし、
    1本の歯のために、両横の健全な歯を2本を削って、
    ブリッジを作るというようなことも、しませんよね。
    昔は平気でしていましたが。

  7. 白い花 より:

    そらさんへ
    もう、言葉もありませんでしょう?
    思い出しても、泣きたくなります。
    私は、これで、歯科不信どころか、人間不信になってしましましたようです。
     

  8. 白い花 より:

    昔の乙女さんへ
    この歯医者は、コンプレックスの裏返しでしょうか、
    プライドがありすぎてこんなだったのでしょうね。
    奥さんといい、普通の感じではなかったのは、
    やはり何か精神的に裏にあるのだと、もっと早くに、気がついて、止めるべきでした。

  9. 白い花 より:

    洋子さんへ
    私もこれで最後で、こんな酷いことはないと思っていたのですが、
    本当に怖いのはこれからでした。
    雪だるま式に雪の坂道を転げ落ちるようです。

  10. 白い花 より:

    Tamakiさん
    私の書き込みって? 月の裏側の基地探しのところのですか?
    それが、こんな大決心をあなたにさせたのですか?
    私は責任重大ですね。
     
    でも、大勢の友人達に一言の断りというか、説明もなしに突然なのですね。
    お仕事優先で戦うという決意は、それはそれで、あなたの自由な決断だと尊重させていただきますが、
    あなたが誘って、今日まで来た友人達に、一言説明があっても良いのではないでしょうか?
    少なくとも私は、こんな形の止め方に、理不尽なショックを感じました。
     
    どうか、あなたのエネルギーを大切に使って、お仕事頑張ってくださいね。
    若いこれからのあなたに期待しています。

  11. 白い花 より:

    Tamakiさん
    今、あなたのスペースへ行って参りました。
    プロフィールのところに、あなたの短い断り書きがありました。
    それを先に見ずに、前のコメントを書きました。
    申し訳ございません。
    でも、やっぱり、あれでは・・・と思いました。
     
    いずれにしろ、あなたのこれからのご活躍を!

  12. Misa より:

    こんばんは☆
    患者さんが言っていることに、耳を傾けないなんて・・・。
    それも、「痛い」という苦しみを、わかってくれないなんて。
    きっと、患者さんのことだけではなくて、自分以外のひとの話を聞かない
    ひとなのでしょうね!

    今でもこの歯医者さんは、患者さんを診ているのでしょうか。
    酷すぎます(>_<)
     

  13. 白い花 より:

    Misaさん
    私も、なんという歯科医かと憤慨しています。
    そんな人はいつか、自業自得の天罰?が下ると・・・
     
    話が飛びますが、「かもめ食堂」読みました。
    良かったです。軽くて柔らかいタッチだけれど、暖かくて主張はしっかりしていますよね。
    あの男の子の日本語、可笑しくって、一人笑い転げていました。

  14. Unknown より:

    歯医者に行かなくてすむと、いいのに・・・
    と、ずっと、祈っておりますが・・
    でも、文章の素材が一つ消えてしまいますしねぇ・・
    (-_-;)

  15. 白い花 より:

    ぞうさんへ
    わざわざ来てくださったのですね。有り難うございます。
    いえ、文章のネタは、いくらでもあるのですが・・・
     
    このブログって、MSNのIDがないとコメント書けないのですね?
    知りませんでした。

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