歯科治療8年の苦労ばなし  14

                                                 
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 イシク・クル湖の近くに、岩絵野外博物館というところがあって、
 
山ヤギや狩りの場面などが描かれた大小さまざまな岩が、あたり一面に
 
転がっています。みごとな絵は4000年位前のものらしいです。
 
 歯のほうは、やっぱり低すぎて、食事の度に憂鬱になります。
 
この夏、アイスクリームを食べ過ぎて体脂肪が???になっていたので、
 
食欲がなくなって、ちょうど良かったと思うことにします。
 
 今回は、まだ第十章のつづきです。事実は小説よりも奇なり・・・!
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             「歯科巡歴の記ー蟻地獄に落ちた」
 
 
      第十章  しぶしぶ五軒目の歯医者へ

         四  仮歯で息が苦しく錯乱状態 
 
 
 歯も顎も筋肉も痛いままで、五軒目の歯医者から逃げ帰ったが、 どうして良いか分からず、
 
食卓の椅子に座ったまま、白い壁を見つめていた。
 
 シーンと静寂が耳に張り付く。痛みが増す。なぜか苦しい。
 
 私はこのまま発狂してしまうのでは。
 
 このことだったのだ!
 
 K歯科医が言っていた患者さん。ヒステリックに部分入れ歯を外したという患者さん。
 
 突然、思い出した。きっと同じような状態だったのだ。
 
 一人でいるのが怖い。誰かと話をしていなければ、正気を保てないような気がした。
 
 友人に電話をする。次々と四人にかけた。まだ大丈夫。
 
 それでも、苦しさは増すばかり。いったい、なにが苦しいのだろう。
 
 精神的に追いつめられて苦しいのだろうか。それもあるかもしれない。
 
 しかし、もっと違ったなにかがあるような気がした。
 
 今までとは違って“痛い”というだけではなく、“苦しい”と感じるのはなぜだろう。
 
“苦しい”という形容詞はどういう時に使うのだろうか。
 
 歯が苦しい。顎が苦しい。顔が苦しい。頭が苦しい。そんなふうには言わない。
 
 心が苦しい。胸が苦しい。喉が苦しい。息が苦しい。
 
 そうだ! 息が苦しい! 息が苦しいのだ!
 
 洗面所に走った。喉が真っ赤に腫れている。鏡の中で、舌の左半分が膨れて大きい。
 
 右半分が小さい。舌が捩れて喉に落ち込み、蓋のように喉を塞いでいた。
 
 これだ! 苦しいのはこのせいなのだ! これに間違いない。
 
 やっぱり仮歯が大きすぎて、この状態を招いているのだ。
 
 仮歯を早く外さなければ! 
 
 力いっぱい引っ張る。何度も引っ張る。仮歯はびくともしない。素手では無理なのだ。
 
  もう夜だ。歯医者は閉まっている。明日、歯医者で外してもらおう。
 
 気休めに鎮痛剤を飲んだ。
 
 舌がもっと腫れ、喉がもっと塞がれ、苦しさがもっと酷くならないことを祈った。
 
 筋肉の緊張、引き攣れ、骨の押された痛みには鎮痛剤の効果はなかった。
 
 この苦しさはどうしようもない。平静を保てそうもない。
 
 食事もできない。
 
 左側は顎も歯も痛いので噛めない。右側は、顎は痛いが、歯は痛くはない。例の金歯で
 
噛めるはずだ。が、左側の仮歯が高すぎて、上下の歯を噛み合わせようとしても
 
歯が届かない。空きっ腹で余計に、イライラしてはいけない。プリンとヨーグルトを流し込む。
 
柄の長い大きなスプーンで口の奥の方まで持っていって舌に乗せる。でないと口から溢れ
 
出る。赤ん坊か病人のようで、これが自分自身のことだとは到底思えなかった。
 
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「いいかげんにしてよ!」
 
 言うと同時に、食卓の上の本や雑誌、辞書、新聞など、力いっぱい払い落としていた。
 
 夫の些細な言葉にカチンときた。その言葉が、なんだったのかも記憶にない。
 
 しかし、それがラストストローになった。痛みと緊張と不安をぎりぎり踏ん張って耐えていた。
 
耐えきれずに爆発した。
 
 驚いた夫は、食事もそこそこに、無言のまま二階の書斎へ引き揚げて行った。
 
 夫以上に私自身が驚いた。結婚して三十年近く、口喧嘩はしても、そんな実力行使のような
 
ことはしたことがない。床に散らばった本を拾い集めながら、これはどういうことかと自分の
 
行動信じられなかった。感情にまかせて、喚く、怒鳴る、泣く、物を投げるというようなことは
 
未だかって経験がない。
 
 床に落ちた物を見て、さらに信じられないというか、可笑しかった。電子辞書のような壊れ
 
そうなはちゃんと除けて落としてある。払い落とす瞬間、これは壊れるから駄目と思った
 
のを記憶している。
 
 この調子だと、明日の朝までなんとか保つだろう。
 
 救急車のお世話になるのは性に合わない。
 
 気休めだが再び鎮痛剤を飲んでベッドに入った。
 
 
 
 午前三時、鎮痛剤を飲もうと一階のキッチンで、うろうろしていると夫も降りてきた。
 
「ペンチで外したろうか」
 
「朝一番で、歯医者へ行くから」
 
 夫の申し出は嬉しかったが、仮歯だけでなく、その下の本物の歯まで、抜けてしまわないか
 
心配だった。
 
 しかし、なんとかこの仮歯を外したいという思いが消えない。血みどろで必死になってペンチ
 
仮歯を外している。そんな自分の姿が目に浮かぶ。
 
 朝が来るのをじっと待った。頭は冴えていた。夫も眠ってはいないようだった。
 
 
 
 朝一番、健康保険証を握り締め、歯医者の診察開始時間の前に家を飛び出した。
 
 この仮歯を外してくれればいい。近くの歯医者に飛び込んだ。
 
 木曜日、たいていの歯医者は休診日で休み。近くで一軒だけ木曜日も診察しているところが
 
あった。その歯医者は近所では評判が良くない。そこへ飛び込んだ。

           P1000460
                                          つづく

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歯科治療8年の苦労ばなし  14 への19件のフィードバック

  1. ぷち より:

    歯痛の悩みは私もけっこう長い歴史がありますが・・・白い花さんの場合は・・・(>_<)

  2. じばこ より:

    歯医者に通っていることで、こんなに切ない、理解してもらえない話って
    ないですよね。
    身体が限界を超えてしまったのですね。
    旦那様も、心配されたでしょうが、側で抱きしめて欲しかったですよね。
    夜になって、ただごとじゃないのを察したのですね。
    休診日と重なったりして、タイミングが悪かったですね(p_-)

  3. Misa より:

    こんばんは☆
    まずは遺跡(というのかしら?)のお写真・・・すごいです~。圧倒されます。
    4000年前の絵なのですね。ずーっと広がっていて、こういう場所をしりませんでした!
     
    歯のお話…やっぱり何度読んでもひどいです。
    人間性を変えてしまうほどの痛みだなんて、さぞお辛かったことと思います。
    ああー、でも、「近所では評判が良くない歯医者」に飛び込んだ白い花さんの
    その後が気になります・・・(>_<)

  4. 洋子 より:

    精神の均衡を崩すほどの痛み・・・
    私も母のそんな様子を間近にみていたものですが
    白い花さんもどんなにかお辛かったことでしょうね。
    評判が良くなかろうととにかく一分一秒でも早く何とかしたい思いには
    替えられなかったのですね。はてさてこの後は・・・??
     
     

  5. 乙女 より:

     
    まるで現実離れしていて小説のようです。
    医者にかかっていてこんな状態になるなんて・・・
     
    木曜日が休診の病院は多いですが、

    評判の良くない医者だと知りつつ
    駆け込まなくてはならないほど切羽詰まっていたんですね。
    その後が気になります・・・(>_<;)
     

  6. Unknown より:

     
    安易に‘わかります’等といってはいけないと思いますが・・
    でも、わかります。
    歯の不都合は本当に辛いですよね~
    それにしても
    体の一部に、医療行為をしている
    という、意識の無さは、想像を超えています
    それを乗り越えて、いまこのように書いておられる
    白い花さんの強さにも感心しています
    8年は長いですね~
     
    追::参照がでて来ません^^;)
    ・・で、まだ姿を入れることが出来ません
    亡霊みたいですが・・ごめんなさいね

  7. hulala より:

    こんばんは
    前回は来たのですがアルバムだけ見えて
    ブログはは入れませんでした。
    今回読ませてもらったのですが ずっと前からの文を読まないとコメントがかけないので
    もう少しじっくり読ませてもらってからコメントします。
    歯の治療が大変らしいですね、お大事に。

  8. hulala より:

    歯科治療8年の苦労話を1~14まで読みました。
    なんでもなかったのに、ここまで痛みを抱えてしまったなんて辛かったでしょうね。
    歯の痛みは抑えようがないのですものね、白い花さんには耐える力があったから8年もの時間を
    耐えられたのでしょう。続きはどんな状況なんでしょうね。
    それにしても痛み止めを持ってロシアへ行くのは勇気がありましたね。
    hulalaはあるとき 朝方お腹の激痛で救急車のお世話になり、病院のベットにも移動できないほどのこともありました。
    入院しないで帰れたのですがいつ痛みが再発するかわからないといわれて、不安でしたがその3日後には出かけました。
    どこに居ても痛みが来るときは来るのよ、と友達に言われ、納得したのでした。
     

  9. 白い花 より:

    ぷち・ぷち・P さん
    歯は一端こじらせると長くなるのでしょうね。
    私の場合は極端なのでしょうが。

  10. 白い花 より:

    爺婆仔さん
    夫は歯が丈夫で、以前は1カ月に1度くらい、今は1週間に2,3度歯を磨くだけ
    で虫歯にもならないのです。そんな人は歯周病になって、歯が抜けると言われていますが、それも大丈夫なようです。
    子供の頃に1度、大人になってからも2度しか歯医者に行ったことがありません。
    それで、歯のトラブルに対する同情が薄いというか、理解できないようです。

  11. 白い花 より:

    Mjsaさん
    あの山ヤギの絵、ピンぼけでなかったらもっと迫力があったのですよ。
    味のある絵で、私の驚きました。
    もと社会主義圏の名所旧跡、観光地などは、
    まだまだ日本などには、知られていないところがあるのでしょうね。
     
    歯は、まだまだ不運?が続きます。
    友人には、”お払い” に行くのが一番だと言われました。
    私もだんだん、そんな気になって・・・

  12. omi より:

    僕のところにも来て下さって、ありがとうございます。
    お話しいただいとように、
    歯医者に行くのをもう少し待ってみようと思います。
     
    キルギスタンの風景とてもきれいです。
    湖の青が特に鮮やかに見えました。
    遺跡もすごいですね。4000年も前に造られたんですね!
    人間の力は一人は小さいけれど、みんなの力が合わさった時
    はすごいですね。

  13. 白い花 より:

    洋子さん
    痛いと交感神経が緊張して、
    感覚的な感受性も精神的な感受性も鋭くなるようですね。
     
    お母様、ご本人もお辛かったでしょうが、それを見ている周りの方達もお辛いのですよね。
    夫も、オロオロしていました。
    日頃おしゃべりな私が、一言もしゃべらず、家の中がシーンとしていたそうです。
    今は、うるさくて、あの頃の方が良かったと憎まれ口をたたいていますが。
     

  14. 白い花 より:

    昔の乙女さん
    本当に、事実は小説よりも奇なり、と思わず言いたくなりました。
    こんなことで、第2の青春を使ってしまうのかと、悔しかったのですが、
    家にいる時間が長くなったお陰で、こうしてパソコンも使えるようになりましたし、
    他にもすることを発見?したり、良いこともあったように思います。

  15. 白い花 より:

    そらさん
    辛いことは他にも沢山あると思います。
    私は今度のことで、個人個人の辛さは、同じと言うことがなくって、
    一人一人違うのだろうなあと思うようになりました。
    分からないと言うことを前提に、少しでも理解しようとしてくださる方は、
    きっと、その方も辛い体験をなさったのだろうと想像しています。

     
    「体の一部に、医療行為をしている
    という、意識の無さは、想像を超えています」
    と仰っていますが、同感です。
    歯医者は、もっと医者としての自覚を持つべきだと思いました。

  16. 白い花 より:

    hulalaさん
    1話から14話まで、一度に読んで下さったのですね。
    大変だったのではと心苦しいですし、本当にありがたいことだと思っています。
     
    「どこに居ても痛みが来るときは来るのよ」
    私も、そう思っています。
    ただ、ロシア行きは、他の方に迷惑をかけることになる場合もあるので、反省しています。
     
    hulalaさんの痛みは、すっかり治られたのですか。
    痛い時も辛いですが、また痛くなるのではという恐怖心も辛いですよね。

  17. 白い花 より:

    omiさん
    そうして下さい。でも酷くなっても困りますので・・・
    良い歯医者さんを探して下さいね。
     
    キルギスの湖の青も、空の青も、嘘のような色でした。
    どうしてあんな色になるのか不思議です。
    空気の乾燥度が違うせいなのか、他にも色々要因があるのでしょうね。

  18. ク~ より:

    こんばんは・・・
    こんな時間に目が覚めてしまって(笑)
    実はまだ全部読んでなくてあまり‘歯科治療’について
    コメントが書けませんでした・・・
    歯って質の良い方って存在するようですよね・・・夫の祖母が80ぐらいで亡くなったんですが
    死ぬまで自分の歯でした
    私も相当質が悪い方なのでものすご~~く気持がわかります!!
    治療が現在進行形なのかどうか理解できていませんが・・・
    最近ま一年近く通った先生を紹介したくなりました・・・・
     

  19. 白い花 より:

    酔いどれク~さん
    ご親切に有り難うございます。
    私も歯は弱い方ではなく、どちらかというと良い歯の方に入っていたと思います。
    あまり歯医者に行ったことがなくて、10年ぶりに、
    歯を磨いたときに虫歯の味がするから、早い目にと思って
    歯医者に行ったのが間違いだったようです。
     
    歯の治療を初めて、ずーっと後になって知ったのですが
    一度、神経の治療に失敗すると、その後の治療が難しいものになるそうです。
    成功の確率はどんどん下がっていくらしいのです。
    最初の頃に、私に歯の知識があったら、最初の歯医者が失敗していなければ、と悔やまれます。

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