歯科治療8年の苦労ばなし  17

        
                P1000290
 今回の写真は、キルギスタンの首都ビシケクにある、この国唯一の五つ星ホテルで
 
撮影したものです。食べ物の盛りつけなど、ちょっと面白いなあと。
 
 歯の方は、左右の奥歯の高さのバランスをとるために、クラウン、部分入れ歯を削り、
 
スプリントも削って、さらに噛み合わせの位置を調整し直しました。
 
それが月曜日だったのですが、その日と翌日は左顎の下の筋肉が攣って痛くて痛くて、
 
夜もまんじりと眠れません。ああ藪歯医者! 次の予約日まで我慢できない!
 
ところが水曜日くらいから痛みが、かなり取れて、気がつくと舌の筋肉が緩んで
 
口が楽に大きく開くようになっているのです。これには驚きました。
 
もうまな板の鯉、信じて任せるしかないと、またまた思いを新たにしました。
 
ただ、クラウンや部分入れ歯がさらに低くなってしまったので、
 
スプリントは食事と歯磨きの時以外は嵌めていなければなりません。
 
 今回は、六軒目の歯医者から逃げ帰って、次の歯医者へ行きます。
             P1000238      
 
 
           「歯科巡歴の記ー蟻地獄に落ちた」
 
 
    第十一章  六軒目の歯医者
 
         
           六  白い壁に逃げ帰る
 
 
  六軒目の歯医者から逃げ帰る。
 
 五分の道のりが遥か遠くに感じられた。早く我家に帰りたい。
 
  家に着いた。安全な隠れ家にやっと辿り着いたようで、ほっと暖かい空気が肩を包む。
 
 食卓の椅子に座り、白い壁を見つめた。何度こんな思いで、この壁を前にするのだろうか。
 
 
                                                                           P1000264
 数日が過ぎた。
 
 六軒目の歯医者で少し低くしてもらったブリッジの仮歯は、まだ高いのか、きついのか。
 
なかなかすっきりしない。ついに我慢できなくなった。仮歯を力いっぱい引っ張る。前回は自分
 
の歯まで付いてきて抜けるのではないかと怖かったが、もうそんなことは気にもならなかった。
 
とにかく外したい。そんなに堅く付いていなかったのか、今度は自力で外れた。
 
 痛みが無くなったのではないが、どれほど気持ちが良かったか。
 
 二、三日で締め付け感、痛みは激減した。もちろん鎮痛剤は手放せない。舌の腫れ、捻れも
 
目に見えて取れていった。筋肉痛を感じた舌右半分は、おおむね元に戻った。
 
  どういうわけか筋肉痛を感じなかった左半分は緊張したままだ。顎関節は、左右両方とも
 
まだ痛い。首から上だけでなく全身の筋肉が引き攣った状態もまだ残っている。腹筋運動を
 
すると喉が締まって息が詰まる。
 
 平衡感覚も狂ったままだ。
 
  歯の状態はさらに悪くなる一方だった。大き過ぎる仮歯のままで我慢していた二週間の間に
 
上前歯の歯列が歪んだ。右上の奥歯も動いている。歯が内側に倒れ込み歯茎の奥に入って
 
行くというか、埋もれていくように感じるのだ。六軒目の歯医者で歯型を取った時には、既に
 
以前とは違っているようだった。その後も、まだ倒れ込んでいるように見える。
 
 精神的には最悪だ。もう、どこの歯医者へも行きたくない。
                                                                      
                                                              P1000237
 
  しばらくして、肉体的にも精神的にも少し落ち着いたと思えるようになった。
 
 鎮痛剤も残り少ない。やっぱり歯医者へ行かなければ。どこへ行けば良いんだ。
 
 ここまでややこしい複雑な状態を、普通の開業医では到底治せないだろう。T大病院か、
 
大阪の大学病院か。五軒目が駄目なら大阪の大学病院と決めていたではないか。
 
しかし、大学病院へ行けば、事情を最初から説明しなければならない。そう思うだけで
 
行く気が萎える。説明する気力がもう残っていない。少しでも事情の分かっているところが
 
精神的に楽だ。
 
 K歯科医が大丈夫だと豪語し、そのまま放置して、こうなったのだから責任がある。
 
自身で治療出来なくても、どこか紹介してくれるかもしれない。責任を取ってもらおう。
                                                              P1000241

 
 
    第十二章  T大病院K歯科医再受診
 
 
        一  業務上過失致死共同正犯     
 
 
 唇の血をペーパーで拭き取って診察室へ入った。歯列が歪み前に飛び出た上前歯のエッジ
 
が下唇に当たって痛い。粘膜を傷つけ血が出る。
 
「どうですか。その後は」
 
 肩透かしを食らいそうな呑気な調子だった。
 
 五軒目の歯医者に、なにも聞いていないのか。わざとなのか。
 
「大変でした。もう少しで、先生は業務上過失致死の共同正犯になるところでしたよ。
 
責任を取っていただきに来ました」
 
 私は笑顔で、しかし、はっきりと言った。
 
「なにっ!」
 
 K歯科医は、右手で顔のマスクの左端をしっかり握ってバサッと外した。
 
「先生は、この痛みを我慢して乗り越えれば、あなたの歯は治る、絶対取り返しの付かない
 
ことにはならないと仰いましたよね。でも、あれから、とんでもない事になりました」
 
 この一カ月間の出来事を説明した。
 
「あの先生、いくら症状をお話しても聞く耳を、お持ちではありませんでした。状態をお解りで
 
はなかったようですし、プラスティックの仮歯を扱うのも始めてだったようです。
 
これは開業医では手に負えない、大学病院の歯科の補綴科にでも行かないと無理だと
 
仰いました。でも、紹介はして下さいません。全然やる気がないようにお見受けしました」
 
「アッ、ハッハッハッハー」
 
 笑っている場合か!
 
 一カ月間の経過を話せば話すほど腹が立ってくる。もう抑えることができなかった。
 
 私は三千人の観客にマイクなしでも聞こえるよう、二十年以上もボイストレーニングを
 
していた。声量だけでなく、遠くまで通ってしまう声質になっている。いつもは周りに迷惑の
 
ないように気をつけている。が、このときは、声をコントロールする余裕はなかった。怒りと、
 
どうしようもない焦燥感を込め全力で訴える声は、診察室だけでなく、外の待合室にまで響き
 
渡っていたに違いない。
 
 助手の若い先生は驚いて私の顔をじっと見つめる。関係のない職員までが覗きに来る。
 
 歯科のボスであるK歯科医は面目丸つぶれだ。私の剣幕にどうしようもない。
 
「こんな取り返しの付かない状態になって、もう趣味の朗読もできないではないですか!」
 
「とにかく、仮歯を外したままだとまた顎関節が落ちてくるので、
 
落ちないようになにかしないと」
 
「どうするのですか!」
 
「うちにある金属の仮歯を、ブリッジの足になる二本の歯に被せましょうか」
 
 それはブリキのバケツをひっくり返したような形のものだった。既製のもので、かなり大きく
 
見える。被せると舌に引っ掛かって邪魔になりそうだった。
 
「それですか…?」
 
「神経質な人には駄目かな」
 
「他にありませんか」
 
「僕、まだ他の患者さんも待たせてるし、明日、出直してくれる?」
 
「……」
 
 また、明日出直せ? 一日がかりの通院なのに!
 
 こんなケースは初めてで、どう対処して良いか分からず、困り切っているのは明らかだった。
 
治療方法も分からない様子だ。仕方がない。明日までに知識を仕入れて、なにか良い治療法
 
を考えてくれるのを待つしかないか。興奮を抑えきれないまま、病院を出た。
 
 人前で、あんなに感情的に思いっきり言いたいことを言ったのは生まれて初めてだった。
 
普段だったら自意識過剰。そんなことは格好が悪いと体裁を気にして冷静さを装っている。
 
意見の主張はしても感情を込めることは、まずない。
 
 かなり追いつめられていると自覚した。
                                                  P1000268
 
                                                   つづく
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歯科治療8年の苦労ばなし  17 への16件のフィードバック

  1. ク~ より:

    キルギスのホテルの食事・・・おいしそうなフォトです
    なのに歯のブログは相変わらずつらそうで・・・
    ギャップがなんだか・・・(*^_^*)
    臨機応変ってできなさそうなお医者さんが多そうですよね
    歯に限らず・・・・

  2. じばこ より:

    漸く、言えたのですね。
    勇気より、せっぱ詰まった結果ですものね。
    私の友人で、医者の前には、この位、はっきり言って訴えている人がいますよ。
    はっきり言うことによって、特別よく診てもらっているみたいなので、私も鼓動
    ドキドキしながら、参考にして言える医者を捜しています。
     
     

  3. 乙女 より:

    今迄溜まっていた思いをぶちまけられたのは良かったけど、
    残念ですが先生の対応には誠意が感じられませんでした^^;)
     
    歯は簡単に動いてしまうそうだから、
    キチンとした処置をすると思うんですがね~
     
    良い結果になるといいのですが、
    今後の報告が気になり不安です。
     
     

  4. ハクション より:

    愚かな・・・
    大学病院が一番などという妄想は捨てるべきです。
    全身麻酔下でする手術はそうかも知れませんけど・・・

  5. 白い花 より:

    酔いどれク~さん
    あのパンの盛りつけ?面白いでしょう。
     
    拗れてくると、何科の医者でも、名医を見つけるのは至難の業ですよね。
    整形外科と歯科は、なかなか良いところが見つからないらしいですが・・・

  6. 白い花 より:

    爺婆仔さん
    やっぱり言うべきことは、はっきり言わなければいけないですよね。
    でも、言っても成果がない時もありますし。
    返って、機嫌を悪くするひともいるようです。
    私も、言ってきちんと対応してくれるお医者さんを探さなくてはと思います。

  7. 白い花 より:

    昔の乙女さん
    歯は簡単に動いてしまうと、素人でも知っているのに、
    対応してくれないのですよね。
    歯医者も知識として知っていても、するべき処置が沢山あると、後回しになるようです。
    で、ますます状態が複雑に悪化するのですよね。

  8. 白い花 より:

    ハクションさん
    大学病院が一番などと思ってはいません。
    ただ、歯科の開業医は粗製乱造で、ピンキリの差がありすぎます。
    ピンに当たればいいのですが、それを見つける術がありません。
    ハクションさん自身が、まともな歯医者は1000軒に1軒だと仰っていましたよね。
    1000軒の歯医者を当たるのは不可能です。
     
    それと、私の知る歯科の開業医では、
    仮歯の材料さえ置いていないし、扱ったこともないというようなところばかりでした。
    仮止め用のセメントの種類も1種類しかなかったりします。種類が複数あると言うことさえ知らなかったり。
    検査用の器具、機械はほとんどないようでしたし。
    大きな病院はそういうものが準備されています。
     
    経営的にも民間では、儲けを考えなくてはいけないので、
    保険で作った歯を、合わないから作り直すというようなことは出来ない相談のようです。
    治療時間も、良心的な歯医者で長くて30分がせいぜいです。
    そういう意味でも、大学病院では開業医で保険が効かないものでも、安く作ってくれます。
    時間も損得はあま考えずに1時間、2時間とってもらえます。
     
    ハクションさんは開業医の歯医者さんですよね。だからそう仰るのは良く理解できます。
    愚かと決めつける前に、拗れて複雑になってしまったケースに対応できる歯科医を、
    どうすれば見つけられるのか、言ってくださった方が建設的だと思いますが。

  9. 洋子 より:

    行きたくなくなりますよね。
    でも現実に襲ってきている状況を何とかするには
    どこかで何かしてもらうより他てだてがないですもんね・・・
    精神的にも危機的状況だったといことが
    怖いくらい伝わってきましたよ。
    ああ・・・どうなっていくのでしょう・・・

  10. 白い花 より:

    自分で治せるものなら治したい、という感じです。
    でも、そうもいかなくて。
    ほっておけばそのうち治るものでもないし。
    精神的にまいっていました。

  11. Misa より:

    こんばんは☆
    本当に壮絶です。白い花さんが感情を抑え切れなくなったのは
    当然のことだと思います。
    それでも明日出直せという医者の神経が信じられない!
    今はもう良くなったとわかっているから、まだ少しは落ち着いて読めるんですが、
    もしこれが、現在進行形のブログだったら、私耐えられずに泣きながら読みそうです・・・(T_T)

  12. 白い花 より:

    Mlsaさん
    あ、今、Misaさんのところから帰ってきたところです。
     
    大抵の方が、同じことを仰います。
    今、元気そうだから、一応安心して読めるけどと。
    たぶん、現在進行形だったら、ブログには書けなかったと思います。
    元気になったから、今こうして色々なことが出来ているのだと。
    本当に良かったと、感謝しています。

  13. Unknown より:

    白い花さん、
    一気読みでした。ふー。
    これまで、押さえておられたがでてしまったのですね
    そのお気持ちは、とっても良くわかります
    私だったとしても、同じように言っていたかもしれません。
    決して、‘愚かなこと・・’でないですよね~
    それより 自分の技量を超えている事をきちんと患者に説明しない
    歯科医のほうがオロカであり、問題ではないか思います
     

  14. 白い花 より:

    押さえていたのもあると思います。
    それだけでなく、痛みとか、喉を締め付けられるとかで、交感神経などが刺激され、
    興奮気味になり、ああいうヒステリックな精神状態になるようです。
    今から考えると、K歯科医には、それが分かっていたのかも知れません。

  15. Nami より:

    痛いのにどうしようもな状態で頼るべきところで、信頼できないとなると、
    ものすごく、精神的にもきそうですね。
    早く、白い花さんの状態を理解してくださり、的確に治療してくれるところに出会うことを願ってなりません。
    かわいそすぎます。

  16. 白い花 より:

    namiさん
    優しいお言葉、有り難うございます。
    歯の痛みもですが、精神的にも、かなりきついものがあります。
    ”たかが歯、されど歯” だと思いました。

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