歯科治療8年の苦労ばなし  21

     
        P1000290 
 
 今回の写真は、またキルギスです。
 
この国で、ただ一の5つ星ホテルのちょっと気になったインテリアです。
 
 歯の方は、まあまあ。通院4カ月が過ぎ、スプリントにも慣れ、痛みの変化の仕方も、
 
かなり落ち着いてきたからと先生が仰って、また予約の間が3週間開いています。
 
 前回は、スプリントを付けると反って左顎の筋肉が引き攣って、とても痛かったのですが、
 
今回はかなり楽になっています。痛みも左だけで左右に変化するのは殆どなくなりました。
 
ただ、左右とも奥歯が低くくて食べ物が満足に噛めないので、不快です。
 
食欲が落ち、少し体重が減ってきたようです。まあ10キロ痩せるほどのことはもうないと
 
心配はしていません。
 
 では、第十四章 七軒目の歯医者 の続きです。
  
               P1000235 
          
                     「歯科巡歴の記ー蟻地獄に落ちた」
 
 
   第十四章  七軒目の歯医者
 
          
          二  不思議な指の輪
 
 その日も問診から始まった。三十分くらい話をしただろうか。突然だった。
 
「ちょっと、その柱の前に立ってください」
 
「え? 立つのですか。ここですか」
 
「そうです。できるだけ、じっとしていてください」
 
「はあ…?」
 
「直立できていませんね。バランスが取れていません。後ろから見ると体が、
 
ふらふらしていますよ」
 
「他の歯医者さんでも同じことを言われました」
 
「歯というのは、噛む以外にも色々と大事な働きをしています。次は、こっちへ来て
 
僕の横に立ってくれますか」
 
「えっ?」
 
「そう、それから手の親指と人差し指の先を付けて、輪を作ってください」
 
「はあ?」
 
「そうです」
 
 歯医者は自分も同じように指で輪を作ると、私の指の輪にそれを引っかけて引っ張った。
 
私のもう一方の掌には、なにかビニール袋に入った物を衛生士が順番に乗せていく。
 
「おかしいな。力を入れないでくださいよ」
 
「はあ?」
 
「やっぱりだめだ。ちょっと君、試してくれる」
 
 衛生士にそう言って、その人の指の輪に自分の輪を引っかけて引っ張る。
 
「ああ、ちゃんとできる。大丈夫。もう一度お願いします」
 
 もう一度、私の指の輪で試した。
 
「駄目だな」
 
「なにがですか?」
 
「あ、いいですよ。じゃあ、診察台に座ってください」
 
「はあー?」
 
 診察台に座ると、普通の一眼レフのカメラで口の中の写真を撮った。歯の模型を作るため
 
上下の歯の型も取る。痛くて何日も外したままだった仮歯の形を手直しして嵌め、
 
その状態で、また石膏で型を取る。
 
「何度か、仮歯の形を手直しします。その度に石膏で型を取って保管しておきます。
 
一番調子が良かったのを、取っておいた石膏から形をおこし、本物のブリッジを作ります」
 
 今度こそ良い先生かもしれない。性格も優しそうだし、治療も納得いく方法のようだし。
 
でも、あの指の輪はいったいなんだろう。まあいいか。今度こそ、きっと治る。
 
 帰りの電車を待ってプラットホームに立っていても、久しぶりで気分が軽い。鎮痛剤の
 
手持減ってきていたが、飲む量を減らしても良いかもしれない。
            
                                                                                                               
 
 もう駄目かもしれない、だけど保たせるしかないと自分に言い聞かせていた。
 
“たかが歯”なのだが、こんな調子で二年以上にもなると、精神的に追いつめられる。
 
プラットホームでは端に立たない。端を歩かない。もう嫌になって、いつ電車に飛び込むか、
 
自分で自分の行動に自信がなくなっていた。死にたいと思っているのでは決してない。
 
それまでは衝動的な自殺をする人の気が知れないと思っていたが、遺書のない衝動的
 
自殺というのはあるのだと分かるような気がした。
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    三  仮歯のプラスティックにアレルギー        
 
 
 気分も軽く帰宅の途に着いた電車の中だ。
 
 形を直して嵌め直してもらったブリッジの仮歯が、きつくて、痛くて我慢できなくなってきた。
 
喜んだばかりなのに糠喜びだったのか。筋肉の緊張が顎から首、背中、お腹とアメーバー
 
ように触手を拡げる。
 
 その夜、喉は真っ赤に腫れ、息まで苦しくなった。一カ月前の悪夢の再来だ。どこまで我慢
 
べきなのか。早く外した方が良いのか。迷う。仮歯の接着用のセメントは、痛くなった
 
とき自分外せるよう柔らかくしてもらっていた。痛みの激しさ。息の苦しさ。また以前の
 
ようになるのではという恐怖。とうとう外した。
 
 きつくて締め付けられるような痛みも、筋肉の引き攣るのも、息の苦しいのも治まった。
 
深夜、胸をなで下ろす。
 
 
 
元の木阿弥だ。がっかりして歯医者に報告した。
 
「仮歯の形の修正を口の中でしたのが良くなかったのでしょう。このプラスティックに
 
アレルギーあるようですね。これからは外でします」
 
 あっさり言うではないか。口の中で作業したことに、もう少し責任を感じて欲しい。
 
 プラスティックの仮歯の形を修正するには、まず、粉と液状の薬品を混ぜて練り固め、
 
粘土状のものを作る。なんの粉と薬品だか詳しくは知らない。それを仮歯の上に足し、形を
 
えていく。T大病院K歯科医の説明によると、本来その作業は口の外でするらしい。
 
 ところが、七軒目と五軒目の歯医者は、口の中で作業をした。慣れない作業なのだろう。
 
粘土をたっぷりと仮歯の上に乗せる。形を整える。余分な粘土を削り取る。削りカスが
 
口の中に、たっぷり、べったり、溜まる。作業の間、口内の粘膜は汚染され続ける。
 
 それで、七軒目だけでなく五軒目の大きすぎる仮歯の時も、喉があんなに赤く腫れたの
 
だろうか。口の外でするべき作業を、どうして口の中でしたのだろう。この仮歯は開業医では
 
滅多に使わないないらしい。もともと材料さえ置いていないようだった。作業手順を知らな
 
かっただろうか。
 
「形は、痛くないものができるまで作り直しします。そのうち良いのが出来ます。大丈夫です」
  
 あーあ、そんなものか。しかし、災い転じて福。仮歯のプラスティックにアレルギーがある。
 
トラブルの原因が一つ解った。そう喜んでおこう
 
 以後、作業は口の外になる。息が苦しくなるほど喉が赤く腫れることはなくなった。
 
 仮歯を嵌めると、きつくて痛いのは以前のままだ。治療は続いた。
 
                                                                                P1000242
 
 七軒目の歯医者は、こちらが尋ねなくても色々と説明してくれた。診察室に歯に関する本を
 
何冊か置いていて、読むように薦めてもくれた。歯医者の説明を聞くたび、目から鱗で、
 
そうだったのかと感心する。
 
「プラスティックの仮歯は、あくまでも仮のものですから、柔らかくて脆いです。
 
直ぐに擦り減って、一週間ごとに減った分を足さなければなりません」
 
 以前の歯医者でも仮歯を作ったが、この説明は初耳だった。プラスティックにも種類がある。
 
高さを足して整形し直すことができるものは磨り減るのが早いようだ。
 
「それに、液体が完全に染み込まないわけではありません。きちんと歯を保護する材質で
 
ないので、早く本物にしないと、仮歯を被せてある歯が、どんどん悪くなっていきます」
 
「えっ! そうですか」
 
「それから、仮歯のような噛み合わせの正確でない歯で、長くいると、
 
他の歯の噛み合わせにも悪影響があり、良くありません」
 
「えっ! 知りませんでした」
 
 噛み合わせの悪い歯は顎関節に悪影響があると、以前、K歯科医に教えてもらったが、
 
これは聞いていなかった。
 
「とにかく早くしないといけません。もう二年以上になるのでしょう?」
 
 歯医者は患者を教育しなければならないという使命感を持っているかのようだった。 
 
 クラウン何本かを七十万円も出して作ったが、なぜか力が入らず、ろくに噛めないと
 
ぼやいいる友人がいた。その原因も教えてくれた。神経を抜くとき歯髄を太くごっそり取る
 
と、噛む力が弱くなる。神経を抜いた後の空洞に詰める人工物は、天然の歯髄のようには
 
強い力に耐えることできない。神経を抜く場合はできる限り細く取った方が良い。
 
クラウンを作り直すときも、痛みがなければ歯髄は触らないのが良いらしい。
 
 三軒目の歯医者は、クラウンを作り直すときには痛くなくても必ず歯髄の掃除を徹底的に
 
する方針だった。三軒目のように歯根膜を貫通する程深く神経を取るのも昔流
 
他の歯医者も言っていた。年配なので、新しい知識がなかったのだろうか。
 
 外科的な手先の器用さ、運動能力も若い人のようにはいかない。個人差はあるが、
 
歯医者は年寄りで不勉強なのは良くないということになるようだ。
 
 これだけ色々説明してくれた七軒目も、やっぱり奇っ怪な体験については分からなかった
 
                                                                              P1000261 
 
  この歯の治療以前は過ぎたことを後悔したことは、まずなかった。思い悩んでも解決の足し
 
ならないのなら、したってしようがない。後悔はしないで来られた。今度は違った。
 
最初から、これだけのことを知っていたら、こうはななかっただろう。悔しい。
 
 ここまで拗れて、この先どうなるのかも分からない。少しでも状況を良くするために、今すぐ
 
自分でできることは歯についての知識を増やすことくらいだ。どうしてこうなったのか、自分の
 
が今どういう状態にあるのか、きちんと知らなければならない。無知は罪悪だ。
 
 “餅は餅屋” 素人が生半可な知識を持っていても邪魔になるだけと思っていたが、
 
以後、歯に関する素人向けの本を手に入る限り読んだ。百冊くらいで素人向けの本は手近
 
はなくなった。おかげで歯に関しては随分賢くなったと思ったのだが…。
 
               P1000259       つづく
 
 
 
 
 
 
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歯科治療8年の苦労ばなし  21 への14件のフィードバック

  1. 乙女 より:

    バランス感覚は三半規管かと思っていたら、
    以前のブログで歯の噛み合わせからも狂うんだと知りましたが、
    悲惨で信じられないようなな話ですね。
     
    今までに通った歯医者が悪いのか、
    難しくて珍しい歯の病気なのか・・・
    病院選びも慎重にしなければと思いました。

  2. ク~ より:

    最近はアレルギー体質の方が増えてるので
    先生方も知識は豊富のはず・・・
    でも・・・一晩中はつらい・・・(T_T)/~~~

  3. hulala より:

    歯の治療は1週間でも気持ちが重いのに
    長くて耐えるのが大変だったでしょうね。よく辛抱なさいましたね。

  4. じばこ より:

    体重が減ると歯茎も痩せて、体よりも歯の調子が悪くなりますよね。
    せっかく、体重も戻ったのですから、痩せないで下さいね。
    こんなに自信たっぷりの歯医者も、口先だけだったのですね。
    自信過剰の人って、自分の知識以外の立場に遭うと、対応出来ない
    のですかね?
    最近は、虫歯でも削るな。。。なんて言われきてますが、我々~もう
    すでに遅しですね~(-_-;)

  5. Misa より:

    こんばんは☆
    信頼し始めていたお医者さんのこともこれじゃあ、あれれ?と思っちゃいますよね。
    指の輪は本当に一体なんだったんでしょう?
    もし意味があるのなら、ちゃんと説明してほしいですよね。どんなことでも。
    今はもうどの分野も「餅は餅屋」ではすまなくなっているのかもしれません・・・。
     
    キルギスのホテルのインテリア素敵ですね!
     

  6. 洋子 より:

    専門家であるはずの医師が
    正しい施術をできないというのは問題ですよね。
    こちらはお任せするしかないですし・・・
     
    ホテル内のお写真、綺麗ですね。
     

  7. Nami より:

    指の輪は知ってますよ。オーリングですよね。
    自分の合うものは指が開かないんです。
    そして、自分に合わないものは指に不思議と力が入らなくて、ぱーっと開くんですよ。
    私は昔、縁があってその公演を聴きに言った事もありますよ。
    色にもあるようで、自分に合う色を身につけてるとすごいパワーがあるとか。。。それも、オーリングでみつけるんです。
    不思議でしたよ~。
    でも、白い花さんの機材をそれで選んだんでしょうか?
    歯に関しては、今後何かあれば白い花さんに聞く事にします。へたな歯医者さんよりも詳しいような気がします*^^*
     

  8. 白い花 より:

    昔の乙女さん
    最初の歯医者で神経を抜くのに失敗したこと、
    その後の歯医者で左右の犬歯を含め奥歯を10本近く削られたこと、
    大きすぎる仮歯を嵌められ全身の筋肉がつり、歯列もいがんだことなどなど、
    次々に、その前のことが原因で、処置に失敗して悪いことが重なったようです。

  9. 白い花 より:

    酔いどれク~さん
    最近はインターネットを初め、マスコミでも新しい知識が流れていますが、
    これは5、6年前になりますので、まだまだ、開業医の歯医者さんは、
    新しい知識を御存知なかったのでしょうね。

  10. 白い花 より:

    hulalaさん
    耐えるもなにも、仕方がないというか。
    家族もですが、それ以上に友人達が助けてくれました。
    本当に有り難いと思っています。

  11. 白い花 より:

    爺婆仔さん
    自信のある人は、ちょっと違ったりしたときは、
    柔軟性がないというか、怖いですよね。
     
    ためしてガッテン、私も見ました。
    本当に手遅れですよね。

  12. 白い花 より:

    Misaさん
    だんだん期待はずれになってくるのですよね。
    最初に期待しすぎるのが良くないのでしょうね。
     
    キルギスのホテルはハイアットリージェンシーだったのですが、
    オーナーがインド人でした。
    インテリアも文明の十字路にふさわしいと言うか、
    色々チャンポンの、でも、それなりの統一感があるのですよね。

  13. 白い花 より:

    洋子さん
    医者も色々、ピンキリがあるのでしょうね。
    良く見極めて行かないと、とつくづく思います。
    私の婦人科の主治医は、医者は3軒行かないといけないと言います。
    ご自分が眼鏡を作るときも、眼科3軒で視力をはかって貰うそうです。
     
    キルギスは中央アジアの文明の十字路にあるからでしょうね、
    町を歩いていても、東洋人、西洋人と色々の民族の人を見かけます。
    インテリアもそういう感じで、混じり合った何かがあるのですよね。

  14. 白い花 より:

    namiさん
    Oリングをご存じなのですか。
    私はまったく知らなかったので、何をしているのだろうかと不思議でした。
     
    医学はどんどん進歩していますから、素人の私の知識はもう古いです。
    先週、こちらの 「ためしてガッテン」 というテレビ番組で、虫歯の治療についての話がありましたが、
    虫歯の治療は随分変わってきているようです。
    今までのように、やたらと削って詰め物をするというのではなく、
    そのまま様子を見て、それ以上進行しないようなら削ったりしないというのが新しいようです。

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