憧れの天山北路 1

       
                           

 これは、2006年の初夏、キルギスタンへ旅行したときの紀行文です。2本の歯の再治療の
 
途中、脚の方はまだ杖をついいましたが、無謀にも行ってきました。なにがなんでも行って
 
やると意地になっていたようです・・・
 
 杖をついた歯病みの60歳と、圧迫骨折で背中の痛い70歳の老人二人の旅です。
 
若い人に「よう、そんな年の二人で、しかも、あんなところへバックパッカーのような旅に行っ
 
てきたなあ」 言われました。今から考えると、それもそうだなあと・・・
 
 日程は10日間。キルギスタンへはツアーもなく、自分で手配した二人だけの自由旅です。
 
ゆっくり、のんびり、心の洗濯ができたよう思います。旅行記の写真が以前アップしたのと
 
同じものになりますが、悪しからず。気が向いたら読んで下さいね。 
                       
               ウズベキスタンのタシケントで乗り換え、キルギスタンのビシケクへ向かう
             飛行機から、天山山脈を眼下に。

 

              

              「憧れの天山北路」 

                    

            1  ウズベキスタン経由でキルギスタンへ

 
 
 
   関西空港二十三時三十分発ウズベキスタン・タシケント行きの飛行機を待つ。
 
  深夜の空港待合室は、たいはんの照明は落とされ薄暗い。乗客らしい人影はほとんどない。
 
 搭乗受け付カウンターに係員の姿もない。私が待つ飛行機は成田から関空経由でウズベキス
 
 タンのタシケントへ向かう。東京の友人がすでに成田から乗り込んでいた。タシケントでローカル
 
 便に乗り換え、キルギスタンの首都ビシケクへ現地時間で翌日の朝八時三十分に到着予定だ。
 
 合計十時間ほどの飛行時間、タシケントでの乗り換えに二時間。一泊二日の空の旅になる。
 
 
 
  若い頃からシルクロードに憧れがあった。奈良からイタリアのローマまで踏破はできないだろう
 
 が、できるかぎりのシルクロードの都市を訪ねてローマに辿り着きたい。中国へは七回、中東情
 
 勢の影響を受けて真ん中抜かしでトルコへ一回、すでに訪問済みだ。
 
  若い頃は一人の旅が良かったが、最近は体力、気力が衰えたせいか、一人より、二人の方が
 
 なにかと便利で楽だと思うようになった。煩わしいこともあるが、話し相手がいるのも楽しい。
 
 しかし、そんな辺境の不便なところへ苦労して行きたいという人は、なかなか見つからない。
 
 今回は一緒に行っても良いと言う人が、たまたま見つかった。
 
  キルギスタンへはツアーはない。飛行機のチケットしか予約しないつもりだったが、いつもは
 
 パック旅行をしている友人が不安がる。“まともな”ホテルを出発前に手配した。
 
  私は六十歳、友人は七十歳。体力、気力は期待できないと肝に銘じて機中の人となる。
 
                 
 
  日本からタシケントまでの飛行機の乗客は定員の四分の一もなかった。六個続きの客席の
 
 腕置きを起こし、ベッドのようにして眠ることができた。タシケントで降りる乗客のほとんどは
 
 トランジットで他の目的地へ向かう。日本からローマ、イスタンプール、パリなどへ行くには
 
 タシケントで乗り継いで行くウズベキスタン航空が一番安いのだそうだ。タシケントからは
 
 ヨーロッパの各国はもちろん、東欧、中東、インド、アジア、ロシアの各地、アメリカへも直行便が
 
 ある。中央アジアハブ空港というところだろう。他国の飛行機は乗り入れていなくて、
 
 ウズベキスタン航空の独占のようだ。
 
  朝、空が白む頃、タシケント空港に到着。キルギスタンを目指すのは、私達以外には東京から
 
 乗り合わせた三十代の男の人が一人だけだった。ローカル便に乗り換える待合室で、飛行場の
 
 端から昇る朝日を背に、三人で一期一会の記念のツーショットをそれぞれのカメラに納めた。
 
                                                             
 
    窓のカーテンもヨレヨレのおんぼろローカル便は、意外にも定刻通り離陸した。飛行機は
 
 おんぼろでも、窓からの眺めは超一級品だった。手の届きそうな直下に、天山山脈、その万年雪
 
 を源流とする渓谷の川、その川が山裾から流れ出るところに開けた扇状地。そして、扇形の地に
 
 碁盤の目のように拡がる田畑が、広大な大地へと続く。碁盤の目が次第に大きくなって、その先
 
 に目的地があった。
                
 
  草原の真ん中にコンクリートを流しただけのような、キルギスタンの首都ビシケクのマナス空港
 
 に着た。いきなり、星条旗が目に飛び込む。そのマークは、アメリカンエアーホースの軍用機の
 
 機体に張り付いていた。私達同様、キルギスタンが初めての乗客は驚きを隠せないようだった。
 
 ソ連からの独立国でIMFに一番乗りで加盟した国、親米、親日国だとは知っていた。それに中東
 
 の政情を思えば当然といえば当然だ。だが、実際にこの目で見ると、現実感が湧かない。
 
 真空での出来事のような驚きが先に来る。「ああ、そうだった」と、改めて世界情勢を再認識させ
 
 られた。
 
  入国検査は、私達日本人には甘いが、インド人とおぼしき人には厳しかったようだ。遙々ここ
 
 まで来て入国できないなんてと、気の毒に思う。中東情勢の厳しさがここにも窺える。
 
  たいした設備もないガランとした空港だった。なんとか見付けた小さな窓口で、五十ドルを現地
 
 通貨に換えた。ビシケクの町の中心にあるホテルまで、どうして行こうかと思案していたら、換金
 
 も終えないうちにタクシーが客引きにやって来た。ホテルまで小一時間、三十ドルと吹っ掛ける。
 
 日本の物価で考えれば廉いのだが、この国の物価からすれば法外な料金だ。飛行機で一緒だっ
 
 た日本人と一緒に途中まで乗り合いバス、後をタクシーに乗り換えることにした。日本円に換算し
 
 て、バス代六十円、タクシー代一人当たり百八十円位だった。
 
  六月下旬、けっこう暑い。小型の乗り合いバスはクーラーがついているのか、いないのか、効い
 
 ていない。窓は開かない。日の当たる窓際に三十分もいるとかなり疲れる。友人は普段元気な
 
 人だが、居眠りする横顔の汗を見て、明日からの長距離移動にバスは無理だと悟った。日本を
 
 出るときから、安上がりの旅にしようか、どうしようと迷いがあった。これで決心がついた。
 
 なるべくお金で済むところは済ませ、安全で楽な方を優先しよう。楽をすると、その分、面白み
 
 減るが、いたしかたがない。二人の年齢が頭をよぎる。
 
 
 
  日本で手配済みのホテルは、一日目はこの国で唯一の五つ星ホテル、世界的に事業展開する
 
 “ハイアット・リージェンシー”だ。日本人は入国にビザは不要だが、七十二時間以上滞在する
 
 場合は外国人滞在届けを役所に提出しなければならない。ホテルが代行してくれるかも知れない
 
 と思い、外人の泊まり客が多く、信用のあるホテルを選んだ。しかし、ホテルは提出用の滞在証
 
 明書を発行してくれたが、届けの代行はしてくれなかった。役所には通訳を連れて行った方が
 
 トラブルがなくて良いというアドバイスをくれただけだ。役所は英語が通じないという。首都ビシケ
 
 クの高級ホテル以外の所では英語は通じないし、ビシケクから離れ地方に行くとホテルでも一切
 
 通じないらしい。
 
  仕方がない。役所へは、かなり面倒なことになり時間がかかるのを覚悟で、明日行こう。言葉の
 
 通じない外国人は、まさか私達だけではないだろう。何とかなると楽観する。
 
                   つづく
 
 
 
 
 
 
 
 
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憧れの天山北路 1 への12件のフィードバック

  1. hulala より:

    以前のブログで写真を見たときからどうやっていったのだろうかと気になっていましたが旅行記を乗せてくれたので理解できました。これからも楽しみにしています。機内からの写真も素晴らしいですね。ワクワク

  2. 洋子 より:

    白い花さんの気持ちのたくましさを改めて感じますよ(^_^)続きが楽しみです。

  3. ぷち より:

    こんにちは・・・(^-^)私も旅が好きですが、白い花さんの行動力には脱帽・・・(#^^#)やっぱり、ツアーじゃなく自分で計画しながらの旅行はいいですよね・・・しかも気のあったお友達と一緒だと又違った楽しみがあるでしょうね・・・次のお話が楽しみです!!

  4. 乙女 より:

    海外旅行はツアーでしか行った事がないわ。自分で計画するなんて不安で私には残念ながら無理だなぁ~(><)白い花さんは凄いよ~続きが楽しみだわ♬

  5. abend より:

    シルクロードですか~すごい行動力ですね^^続きが楽しみです。

  6. ひだまり☆☆ニコニコ より:

    白い花さん、おはようございます。お休みはなかなか来れなくて、ごめんなさいm(__)m海外旅行にたくさん行かれているのですねぇ~ひだまりもシルクロードに憧れを抱いているし、こちらで中国展がある時はよく見に行ってますが、憧れの中国に何度も行かれたなんて、白い花さんの行動力に驚いています。ひだまりは西安にある兵馬俑抗博物館に行くのが夢で、できれば若いうちに行ってみたいと思うのですが、、、(^^;同じ夢や同じ想いを持った方と行くふたり旅がいいなぁ~^^ひだまりの友達は中国に出張することが多いのですが(技術指導で)、いつも五つ星ホテルだそうです。激安ツアーはそんなに良いホテルではないですよね?ひだまりはいつ行けるかわかりませんが、白い花さんから旅行のお話しを聞くこと、とても楽しみにしていますよ~~「ちゃん」づけのこと、白い花さんから頂いたコメントを読みホッとしました。ひだまりも職場では子供たちを「さん」と呼んでいるのですが、いったん仕事を離れるとお互いを「ちゃん」づけで呼び合っています。年代が違うものが呼び合うものに相応しいかどうか、いろんな意見があると思うのですが、悩み事を話したり聞いたりする時、方言を使うことと一緒に話しやすい名前の方が良いと思うので、、、^^

  7. Misa より:

    こんばんは☆おおおー!旅行記がはじまったのですね!私のものとは全然違って小説調でかっこいいです。それに私は白い花さんとこうしてお知り合いになる以前は、キルギスタンのことを全く知りませんでした。バックパッかーのような旅…憧れはありますが、なかなか勇気がないです。白い花さんの行動力を見習いたいなあー。これから先も楽しみにしています!歯医者さんの記録は毎回ドキドキしましたが、この旅行記は全然別の意味で、ドキドキわくわくです。続きはどうなるのかなあー。さっそく気になっています。

  8. booo より:

    二人合わせて、130歳! かっこいいじゃないですか!(o^ェ^o)/なんか、その行動力と若さ、分けて欲しいくらいです! 何枚もの機内からの写真もいいですね!心の洗濯がいっぱい出来たようで、今の白い花さんはすがすがしい香りで溢れているようですよ!(・∀・)

  9. ミッキー・フォール より:

    こんにちは~!改めて白い花さんの行動力には驚かされました。wキルギスタンについては、知らないことばかりなんですけど前に国営放送スペシャル番組(新シルクロード)の、イシク・クル湖の美しい姿を見て感動したのを思い出しました。これから旅行記の方も、楽しみに読ませてもらいますね!^^

  10. 白い花 より:

    2006年の6月のことなので、ちょっと古いかも知れませんが、せっかく書いたのでアップしました。よろしくお願いします。写真は公開するつもりで撮っていないので、人物が入らない景色などがあまりありません。次回どこかへ行くときは、そのつもりで景色などの写真もたくさん撮ってこなければと思っています。この旅では5つ星ホテルにも初めて泊まりましたが、それまでは一泊1000円位の大部屋のようなところにも平気で泊まっていました。私は民度が低いというか、若い頃はたいていのところはOKでした。近頃は体力気力が衰えたせいか、だんだん駄目になってきました。パック・ツアーには2度参加したことがあるのですが、窮屈で行った気がしませんでした。それに周りが日本人ばかりで、異国に来た感じじゃあないのですよね。勝手に自由気ままなのが、あっているみたいです。でも、もうそろそろ駄目かも・・・自分で計画して切符など手配すると、安上がりなのですが。飛行機から見下ろした天山山脈は、ほんとうに素晴らしかったです。イシク・クル、行きましたよ! また写真をアップしますね。

  11. パンチ より:

    旅行記の始まりですね。

  12. アイエイ より:

    まことに白い花さんの勇気に敬服しました。ツアーがない場合にお年に極限を挑戦して、たいしたものですね!

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