歯科治療9年の苦労ばなし  61  

 

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  今日の写真は、散歩の途中で撮った近くのたんぼ道です。すっかり秋めいているので驚き
 
ました。散歩といっても、そこまで車で行って、少し歩くだけなのですが・・・
 
 歯の方は、今週の月曜日に歯周科の予約に行ってきました。担当医が退職されること
 
なり、次回からは別の先生に替わります。信頼していた女医さんなので、本当に残念です。
 
この先生のお陰で自暴自棄にならずに、なんとか無事に今日まで持ち堪えて来れたと思って
 
います。どう感謝の心をお伝えすれば良いのか分からないくらいです。これを書きながらでも
 
涙が出てしまいます。本当に有り難うございました。これからも、いっそうのご活躍を!
 
 次に紹介していただいた担当医は彼女の上司に当たる先生で、優しい先生だと太鼓判を
 
押してくださいましたので、ほっとしています。違った見方をすれば、私が彼女なしでも精神的
 
持ち堪えることができる時期になったのかも知れないとも思っています。
 
 今回も、まだ第一章で、”14 歯が割れているらしい” です。

 

        

 

  

          「歯科巡歴の記―歯科からの帰還」

 

     第一章  二人目の主治医

           

           十四  歯が割れているらしい          
 
 左側の第二小臼歯を次の診察日に抜かなくてはならない。悔しいが、どうすることもできな
 
い。諦めた。抜歯までの応急処置として、折れたポールの残骸を取ったあとの歯根には薬が
 
詰まっている。前回は右側の仮歯三本の型取りも済ませた。次回それができているので付け
 
替える予定だ。
 
次の予約まで五週間。ちょっと長いが、その日を待とう。
 
 
 
 ところが、物事はこじれ出すと際限がないようだ。
 
 仕方がないと諦めて帰宅した翌日から、次回抜く予定の歯が痛みだした。しばらく様子
 
見たが、痛みは増すばかりだ。
 
病院へ電話する。
 
「あのう、根っこに薬を詰めていただいた歯ですが、腫れぼったくなって、痛くて……、
 
次の予約まで日がありますので、一度診ていただきたいのですが」
 
「では、もう一度中を洗って、薬を詰め直しましょうか」
 
「その治療をできる先生が、いらっしゃるのですね」
 
「ええ、明朝一番の九時ならキャンセル空きがあります。ゆっくり診られますので」
 
 救急だと歯科医の手すきの空き時間に診る。時間がはっきりしないので待ち時間が長いし
 
丁寧に診られない。たまたまキャンセル空きがあってラッキーだということだった。
 
                             
 翌朝、五時起きで出かけた。
 
「中を洗って薬を詰め直しますので、どうぞ」
 
 外来の入り口で受け付けた若い歯科医は、そう言って案内してくれた。
 
診察したのは、別の若い女医さんだった。
 
「これは治療を仕直しても無駄ですよ。痛みは取れません」
 
「えっ?!
 
「根にヒビが入って割れています。割れた歯は抜かない限り、痛みは取れません」
 
「えっ! ポールが折れたというのはお聞きしていますが、歯が割れたというのは初耳です」
 
「でも、カルテにそう書いていますよ。ポールが折れたというのは書いていないので、
 
私には分かりませんが、歯が割れたというのは書いています」
 
「はあ……」
 
「歯を抜くには主治医の許可がないとできません。次回の主治医の予約まで待って下さい。
 
痛み止めだけ出しておきます」
 
「でも、中を洗って薬を詰め直すとお聞きしました。せっかく遠くから足を運んだのですから、
 
お願いできませんか」
 
「そんなことをしても無駄です。痛みは取れませんから」
 
「でも……」
 
「痛み止めを五回分、処方します。それで治まらなければ、また薬を取りに来て下さい」
 
 そんなあ! 冗談じゃあない。ここまで来るのに、高速を車で往復四時間、交通費五千円。
 
そんなに何度も来られない。
 
「五回分だと、二日分もありませんよね。二日おきに来いと仰るのですか? 
 
次の予約まで一カ月以上もありますよ」
 
「はい。一度に、これ以上は出せないのです」
 
 ここで処方する鎮痛剤はロキソニンだ。そんな危険な薬ではない。整形外科でも婦人科でも
 
二週間分位なら気楽に出してくれる。何度か押し問答を繰り返したが、埒が明きそうにない。
 
「分かりました。じゃあ、レントゲン写真のオーダーを書いて下さいますか。治療は歯周科に
 
お願いしてみますので、承諾が取れれば、この歯の被せものを外して下さいね」
 
 レントゲン写真で、本当に割れているのか確認したかった。次回の予約の日には、すること
 
がいっぱいある。レントゲン写真を撮って時間が足りなくなっては困る。今日のほうが、都合が
 
良いのだ。
 
 歯周科には、歯の神経を治療してもらった担当医がいる。事情を話せば、なんとかしてくれ
 
かも知れない。しかし、主治医ではないので、勝手に被せを外して治療するのは抵抗が
 
あるだろう。補綴科で外してもらうと後の手続きが簡単に進むのだ。
 
 私があまりにはっきりと切り出したので、若い歯科医はこの頼みを聞き入れざるを得なかっ
 
たようだ。彼女は取り立てて人が悪いというタイプには見えない。まだ研修中で、朝、勤務に
 
就いたら、しょっぱなから厄介な患者を押しつけられた。これ以上どうして良いか分からなくて
 
困っている。そんな生真面目そうな可愛い娘さんだった。
 
                                  
 
 歯周科の担当医は外来にいなかったが、救急で他の歯科医が診てくれることになった。
 
待ち時間のあいだに補綴科へ引き返し歯の被せものを外してもらい、一階のレントゲン室で
 
レントゲンを撮影してもらった。その写真を持って三階の歯周科へ急ぐ。
 
一時間も待たずに順番がやってきた。
 
「この歯、割れてますね」
 
「やっぱり、そうですか。でも、どうして先生は、割れているとお分かりになるのですか?
 
歯を見てですか? レントゲン写真からですか?」
 
「カルテに、そう書いてあるからです。事実がどうかは詰めてあるものを取って、
 
中を直接見なければ分かりません」
 
 歯は被せものを外してあるが、まだ綿花が詰まっていて中は見えない状態らしい。レントゲ
 
ン写真も、ヒビのある位置によっては必ず分かるとは限らないと説明してくれた。
 
「そうですか。ポールが折れたというのはお聞きしていましたが、
 
歯が割れたというのは今日まで知りませんでした」
 
「あなた、それで納得したのですか。この歯を抜くと、あとが厄介なことになりますよ」
 
 私の替わりに憤慨してくれているかのようだった。強い調子だ。その声を聞きつけたのか、
 
若い歯科医達が寄ってきてカルテを覗き込んだ。
 
「今日、知ったばかりで驚いています。でも、納得するもなにも、割れたものは元に戻らないで
 
すし……受け入れるしかないでしょう? わざと割ったというわけでもないでしょうし……」
 
「まあ、そりゃ、そうですが……」
 
 溜息のような低い声だった。若い歯科医達もその声に同調するしかないとばかりに、その場
 
の緊張感がいっきにすぼんだ。
 
 この科では、まず救急担当の責任者が患者を診て治療の指示を出す。指示を受けた若い
 
歯科医が、中を洗って薬を入れなおしてくれた。
 
「やっぱり割れてますね。丸い穴が空いて、そこからヒビが延びています。お気の毒ですが、
 
これはもう抜くしかないです」
 
 前回詰めた綿花が大きすぎたのだろうか。新しく詰めなおすと、圧迫感が消えて痛みが和ら
 
いだ。その後は鎮痛剤を飲んでいると、次の予約まで痛みがぶり返すことはなかった。
 
 鎮痛剤は、歯周科でも五回分しか出せないと言う。補綴科で処方しているので、ダブって
 
処方はしてくれない。他の科では大量でも簡単に処方するのに、どうして歯科ではできないの
 
だろう。結局、鎮痛剤は婦人科の定期検診で手に入れた。
 
                                  
 
 ひとまず痛みは落ち着いたが、納得できないことばかりだ。
 
 わざわざ病院へ行く前に電話で治療の内容を確認したのに、あの対応なのだ。それに歯が
 
割れたことを知らされていなかったことも、薬の処方の仕方も。理不尽ではないか。
 
 会計で支払いを待っていた。玄関脇に立つボランティアの人が目に入った。
 
「苦情係はどちらでしょうか?」
 
「どこでしょうね。会計の窓口のもう一つ向こうの、あの窓口で聞いてみて下さい」
 
彼女の指さした先、薄暗い廊下のはずれに小さな窓口があった。
 
「あのう、苦情は、こちらで宜しいのでしょうか?」
 
 若い事務員に事情を説明していると、途中で上司らしい人が現れた。
 
「その科その科に、それぞれ外来診療の責任者がいますので、かかっている科に行って、
 
その先生にお話し下さい」
 
 詳しく教えてくれた。事務では専門の知識がないので、外来診療に関することは各科の
 
責任医師が聞くことになっている。各科の外来には一人の教授が課長としてトップにいて、
 
その下に副課長、医長と続く。外来診療の責任者は医長で、医長会議というものが教授会と
 
は別にあって、外来での問題点などをそこで検討するという。
 
 つまり、私は今から三階の診察室まで戻って、誰でもいいから歯科医をつかまえ、外来診療
 
の責任者に会わせて欲しいと頼まなければならない。診察室には、受付の人がいるわけでは
 
ない。入り口から大きな声で呼び出すと、手空きの新米の歯科医が中から出てくる。用件を伝
 
える私の朗読で鍛えたデカ声は、廊下の椅子に座って待っている患者はもちろん、診察室
 
全体の何十人もの歯科医や患者にきっと聞こえるだろう。注目の的になるのは間違いない。
 
私の趣味は舞台朗読で、かつて三千人にノーマイクでも聞こえるようにボイストレーニングを
 
していた。普段でも腹式呼吸で声を出す癖があり、つい大声になるのだ。
 
「言いにくいですよね」
 
「そうですか。ああ、その先生が、今日、外来にいらっしゃるとは限りませんよ」
 
意気地なく諦めて帰宅する。
                           
 帰宅してから、よけいに腹が立ってきた。
 
 患者の立場を考慮しているとは到底思えない。苦情が言いにくいようなシステムに、わざと
 
しているのではないか。友人に散々愚痴を聞いてもらった。
 
「電話で言えば良いやん」
 
「そうや、賢いわ」
 
 電話をかけると、いつ責任者に会えるか確かめて連絡をくれることになった。
                              つづく

 

 

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歯科治療9年の苦労ばなし  61   への12件のフィードバック

  1. パンチ より:

    毎回アクシデントばかりですね今度は割れたのを隠したのかな?

  2. 乙女 より:

    朝5時起きして行ったのにそんな対応じゃガックリしちゃうわね。一部の先生だと思うけど信頼関係がなくなるわよねぇ~良い先生に巡り合える事を願ってます。

  3. たんぽぽ より:

    コスモス、きれいですね。歯が割れたのを隠していたなんて、ひどいですね。苦情はちゃんと言えたのかしら?心配です。

  4. main より:

    信頼してた女医さんの退職、残念ですね。医は仁なり ですからね。最近のTVで 病院での失敗寸前事例を紹介していました、薬の単位を間違えたり、患者さんの名前を間違えたり、点滴の種類を間違えたりと・・・未然に防ごうという活動が盛んになってきてるとか。いい方向に進んで欲しいものですね。

  5. booo より:

    信頼していた女医さんが退職するのは寂しいですね。新しい担当医さんも信頼できる人であってほしいですね。しかし本当に納得のいかないことと言うか、、、不手際の連続というか、、、ダメな部分を全部、白い花さんが背負ってしまったような。。。こんなことがある事実が本当に怖いですね。。。

  6. Misa より:

    こんばんは☆患者さんにそう思われるお医者さま。お仕事をまっとうされているのと同時に、人間的にもすばらしい方なのでしょうね。残念だけれど、次の新しいお医者さまも、同じようにいいお医者さまでありますように。病院って、舞台みたいなもので、舞台の裏では私たちのしらないひとたちがたくさん活躍されているのと同時に、いろんな情報が行き交い、表を操作しているような、そういう雰囲気があると思います。知らないほうがいいことがたくさんあるのかもしれません。お金や時間をかけて来院している患者さんのこと本当に考えてくれているなら、そんな言葉が出てこないはずなのに…やっぱり事務的になっちゃうのでしょうか・・・

  7. 洋子 より:

    色々とりどりのコスモスが秋を感じさせますね。往復するだけでも大変なのに・・・薬の制限ひとつとってもなんて手間をかけさせるのでしょうね・・・それに何と言っても歯が割れているという重要なことを本人に知らせていない、という点、これ問題ですよね。

  8. ちえみ☆ より:

    信頼しているお医者さんが居なくなるのは残念ですね。。。でも。。。次のお医者さんもいい方かも知れないからあんまりガッカリしないでね。。。花って本当にきれいですね。癒してくれますよね(#^.^#)

  9. さんぽ より:

    やっぱりコスモスが咲くと秋を感じますね。色とりどりでかわいいですね。医師の交代は哀しいですが、太鼓判の医師なら少しはホッとできますね。痛みは辛いですからどうにかして欲しいものですが・・医師にも担当が決まってるとなると・・・患者はどうすればいいのでしょうか!今回は痛みがやわらいだのでよかったですが・・・

  10. sakura より:

    おはようございます。次から次へと困難が続きますね…ほんとうにお気の毒としか言いようがありませんが、その後どうなったのか気になります。そんな中にコスモスの花が癒しを与えてくれますね。もう秋…コスモスを見ると何も言わずとも秋を連想します。四季のある日本ながらの風景ですね、

  11. hulala より:

    今日は歯医者に検診に行ってきました。歩いて3分ほどの所です。歯肉が少し腫れていたのですが見てもらいました。なんでもなくても歯医者はいやですね。板もがあればなおさら、それに何年もかかって・・・読んでいくほどに大変さがましてくるようですね。コスモスがきれいです。

  12. 白い花 より:

    皆様コメント有り難うございました。本当に、なんでこうなるのと落ち込んでしまいます。でも、長い目で見れば、3歩前進2歩後退で前へ進んでいると思っています。

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