歯科治療9年の苦労ばなし  65

 

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  連休中に、孫のちょっと遅目のお宮参りに行きました。たまたま大安だったので神社は大入

 

り満員どの子も健やかに育つことを願っています。

 歯の方は、前回、補綴科で作り直した2度目のクラウンに、9万円近料金を請求され驚き
 
した。私費の特別なものではなく、まったく保険と同じものです。2度目は保険は効かない
 
から3割負担ではなく、10割負担だと言われていましたが、こんな額とは。第一そんな大金
 
持ち合わせていません。保険で2千円ですから1万円もしないはず。会計の方が私の説明
 
に納得して先生に話してくださったり、それでも、らちが明かないのでに直接交渉するよう
 
に勧めて下さったり。で、直談判(本人はなく、助手の方にしか会えませんでが)。
 
結局、11,045円になりした。 会計の方が同情してくださって、今後もなにか困っことが
 
あれば相談してくれと仰っしゃ下さいました。歯周科の新しい先生に続い親切
 
また出会えて嬉しくて、私の気持も優しくなって帰ってきました。
 
 今回は第一章 ”18 割れた歯を渡されて” です。  

               

 
 
             「歯科巡歴の記―歯科からの帰還」
 
     第一章  二人目の主治医
 
           十八  割れた歯を渡されて
 
 
 歯を抜いた。主治医は、歯は割れていないと言う。割れているのかいないのか。真相を知
 
たい。抜いた歯をくれるように頼んだ。
 
 
 
 まだ、今日の治療は終わっていない。このあと、前回に型取りをしたクラウン三本を被せ、
 
歯を抜いたあとのプラスチックの仮歯も形を作り直さなければならない。クラウン三本と仮歯
 
が変わるので、歯列全体の状態が大幅に変わる。それに合わせてスプリントも調整する必要
 
がある。一時間の予約なので時間が足りないかも知れない。それなのに主治医のペースは
 
いやにゆっくりなのだ。
 
 どうしたのだろう。この成り行きのために、やる気をなくしたのだろうか。
 
 急に、主治医は椅子を診察台の横に持って来て、私の目の高さに合わせて腰かけた。
 
突然変身したように、さっきまでとはまったく違う雰囲気になっている。まじめな顔つきで、
 
柔らかな落ち着いた調子で話を始めた。困ったことがある場合の、いつものアレンジだ。
 
 いったいどうしたのだろう。まだ何かあるのか。
 
「実は、今日入れる予定の三本のクラウン、できていないのです。
 
急がせて明日一日で作らせますから、待って頂けますか」
 
「はあ?!
 
 前回、型を取ってから一カ月以上もあった。それなのに卒業式、入学式、アメリカでの学会
 
忙しくて、技工士にオーダーするのを忘れたようだ。
 
「今日の埋め合わせの日ですが、明日の金曜日に作らせて、来週の月曜日は予定があって
 
駄目で……、火曜日に来て下さい」
 
 笑いながら気安く言うが、ここまで来るのに一日がかりで、交通費五千円も要る。
 
                                   
「仮歯、低くなっているでしょう? 高くしておきます」
 
 いつもは私から言い出さないとしてくれないのに、いやに気が利く。仮歯を調整してくれた。
 
だが、一本を高くしただけだ。
 
 その仮歯は、前回、三本続きのブリッジを二本切り落として一本にしたものだ。ブリッジの
 
になる歯一本を抜くと、残ったもう一本の脚の第二大臼歯の前横に二本分の歯の隙間が
 
できる。残った脚一本に仮歯を被せるだけでは、その隙間へ向かって歯が倒れる。歯は後ろ
 
横には倒れにくいが、前横には倒れやすいという。隙間がなくても歳と共に前に倒れて、
 
出っ歯になる人が珍しくないらしい。歯二本分の隙間に部分入れ歯が入るまで、予防のため
 
に後ろ横の親知らずにも仮歯を被せ、二本続きの仮歯にする予定だった。親知らずも七軒目
 
の歯医に削られて低くなっていたので、ちょうど都合が良いのだ。前回は時間がなくて、
 
次回にと約束していた。それを忘れている。
 
「先生、前回、仮歯を二本続きにすると仰いましたが」
 
 ジロッと私を見た。いかにも渋々という感じだが、作業は早いし上手だ。すぐに終わった。
 
「まだ、スプリントを調整していただかなくては・・・」
 
 もおっ、まだあるのかと顔に書いてある。が、次回とは言わなかった。作業に掛かる。
 
クラウンができていなかったので、それを付ける作業をしなくて良い。時間が充分残てい
 
たのだ。時間が足りないときなどは一カ月後の次の予約まで、そのままになることさえある。
 
                                  
 
「有り難うございました。していただくことがたくさんあって申し訳ないです。
 
日本で一番の歯科病院で、しかも、そこの教授に診ていただいているのですから……、
 
私は、どうしてもここで治していただくしかありません。今後とも宜しくお願いします」
 
「ええ、ええ」
 
 主治医は、にこにこと頷いた。
 
 その場を繕うために、こんなゴマすりのお世辞を言った。我ながら恥ずかしくなる。
 
だが、私の言葉に嘘はない。他に診てもらえるところがないのだ。
 
 開業医では複雑な治療になると、材料さえ置いていないところがほとんどだ。技術や知識
 
十分ではないし、営業的にも儲からないので扱わない。一回の治療時間が十五分から
 
三十分を越えるような患者は、大きい公立病院へ回すらしい。今の病院での私の治療時間
 
は、最低でも月一回、補綴科で一時間、歯周科で一時間、合計二時間なのだ。少し大きい
 
病院だと材料は置いているし、時間にも余裕があるようだが、治療のための総合的な深い
 
知識や技術を持った歯科医はいないようだ。歯科という看板でも、口腔外科的な手術やイン
 
プラントなどをやっている病院が多い。厄介な込み入った治療よりも、インプラントや審美歯
 
などの方が手っ取り早く儲かるので、歯科医はそちらに流れるらしいのだ。
 
                                   
 もう診察は終わった。なのに、歯をくれる気配がない。
 
「先生、抜いた歯をいただけますか」
 
「ああ、君、きれいに洗って、歯を渡してあげてよ。
 
歯は割れていませんよ。ヒビも入っていませんからね」
 
 主治医はまた、にこやかに言った。
 
「有り難うございました」
 
 私も笑顔で頭を下げた。
 
 帰りぎわ、助手の歯科医が抜いた歯を小さなビニール袋に入れて手渡してくれた。血は洗
 
い流されて象牙色がかった白い塊が見える。
 
「今日はお風呂には入らないようにして下さい。飲み薬も忘れないで下さいよ。
 
二、三日は、無理はしないようにお願いします。お大事に」
 
 うつむきかげんの丁重すぎる物腰で説明してくれた。彼は治療中も、ずっと顔を上げずに
 
下を向いて作業をしていた。共犯者の後ろめたさを背負わされて理不尽だけれど、どうしよう
 
もない。気弱そうな丸い背中が一時間の作業のあいだ、ずっとそう弁解しているようだった。
 
「はい、分かりました。有り難うございました」
 
 やっと正面から見えた彼の顔に、私はできる限りの屈託のない笑顔を作った。
 
                                                            
 診察室を出ると、廊下のベンチに友人が腰かけていた。
 
「ビックリしたあ! 来てくれたの?」
 
「ちょっと気になったから」
 
 前回から、どうなるのかと心配してくれていた。私の報告の電話を待っていても、落ち着か
 
ない。わざわざ出向いてくれたのだ。
 
 二人で歯を見た。私が急いで小さなビニールの袋を開け、歯を取り出す。
 
 穴が開いて、そこから真っすぐヒビが延びていた。
 
「なんかのときは、証人になってあげるわよ」
 
「ありがとう。歯は元には戻らないし、今後の治療方針が変わるわけじゃないし、
 
事を荒立てるほどのことではないと思ってる。
 
けど、そやけど、あの先生、いったい、どういうつもりなんやろ」
 
                                     つづく
 
 
 
 
  
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歯科治療9年の苦労ばなし  65 への14件のフィードバック

  1. パンチ より:

    90000円は目むくよね、そうですか街の開業医は材料すら置いてないのか、う~ん。

  2. САБУРО(サブーラ) より:

    サブーラです、どうも。難しい歯科治療のことはよく分かりませんが、私の父はシベリア捕虜時代に、ろくに歯を洗わしてもらえなかったこともあって、早い時期に総入歯になってしまいました。だから、「お前らも、歯はきっちりと大切にしろよ歳を取ってから苦労するぞ」と、口癖のように言っていました。この記録はひと事ではなく、大切な歯科医療ドキュメントとして読ませていただきます。

  3. ちえみ☆ より:

    患者さんの事を親身に考えてくれるお医者さんって本当に少ないですよね。

  4. main より:

    こんばんは~冒頭の治療代・・・思わずどうなってるの?!と感じました。想像すると歯科医科大学に通ってみえるかと、小さな歯医者さんでは無理なご様子、お疲れ様です。

  5. booo より:

    技工士にオーダー忘れ・・・お口あんぐりですね。。。最悪そうなら、事前に連絡することは出来るでしょうにね。。。自分だったら暴れちゃうんじゃないかな。。。(;^_^Aでも、いつもながらお友達のやさしさが救われますね!

  6. たんぽぽ より:

    治療代、大変ですね。お友だち、とてもやさしいですね(^-^)

  7. 洋子 より:

    9万円・・・下がって良かったです・・・>そやけど、あの先生、いったい、どういうつもりなんやろもう、この一言に尽きますね。読んでいてまさにそう思いました。

  8. sakura より:

    いや~9万円を払わなくて済んで何よりでした。こんな酷いことばかりでその上大金を請求されたのでは頭にきますよね。次回来てくださいと言われても交通費を請求したいくらいですね。白い花さんのブログを読んでいると医師というのは、社会的非常識なばかりのように思えてきます。

  9. ぷち より:

    こんばんは・・・(^-^)9万円!?びっくりしますね・・・私なら9千円でもびっくりです!(><)なんだかよくわからないシステムですね・・・渡された歯のことも・・・お孫さんのお宮参りに行かれたんですね。九州の実家の近くで長男の初宮参りをした時、通りすがりの方が「幸せになれますように!」と言っておひねりのようなものを下さったことを思い出します・・^^

  10. 乙女 より:

    90,000円の請求額が11,000円になったの?聞いたら安くなるなんてどういう計算なのかしらね。治療費の計算もいい加減な気がするわ。渡された歯も割れていると言ったり割れてないと言ったり、何だかよく分からない先生で心配だわ。

  11. hulala より:

    こんにちは歯医者の料金体系に細かい規則があるようですが、私たちにはわかりませんよね。ただ中には入れ歯を作って、すぐに別な歯医者で又作るといったようなこともあるので、保険医療費の負担を避けるためにあるようです。(歯医者のポスターに書いてあったような気がします)御宮参り、清々しい落ち着いた画像ですね。

  12. さんぽ より:

    なんだか理解できない料金システムで・・・???心強い友人はありがたいですね!

  13. Misa より:

    こんばんは☆会計のシステム、一言いうとこんなに料金が変わってしまうなんて、おかしいですよね!?皆さんもおっしゃっていますが、どれだけいい加減なのだか。。。納期も延びているし、更に不信感ですね。本当によいお友だちをお持ちで、拝見していて私の方が救われる気持ちです。お孫さんのお宮参り、おめでとうございます。元気いっぱいに成長されますように!

  14. 白い花 より:

    いつもコメントを有り難うございます。料金では本当に嫌な思いをします。言った者勝ちみたいな感じです。保険の総入れ歯で、クレームを言って全部作り替えて貰ったという患者さんもいました。すごく綺麗なので、てっきり私費で作ったのかと驚いたくらいです。色々注文を付けたら5本ブリッジをセラミックで作ってくれて、研究費で落としてくれたという患者さんもいらっしゃったので、びっくりです。お二人とも年配のしっかりしたおばさんでした。強くおさないと駄目なのですよね。くたびれます。私は、もういいかと根負けしてしまいそうです。財布にお金が入っていたら払ってしまうかも知れないので、病院へ行くときは少ししかお金は持っていかないことにしました。幼なじみの友人は、本当に頼りになります。命の恩人と思って感謝しています。話が変わりますが、連休明けから体調をくずして風邪気味です。ぐずぐずと1週間以上も経ちますので、新型インフルエンザではないと思うのですが、外出すると、少し咳をしても、鼻をすすっても、周りの人が迷惑そうに顔をしかめます。で、でっかいマスクをしていくのですが、やっぱり気持ち悪そうな視線を感じます。逆の立場なら私もそう思うでしょうから、出来る限り家に閉じこもるようにしています。神戸では学級閉鎖が続いていたりで、受験生のお母さんはどうすれば良いのかとご心配のようです。冬に向かいますが、皆様お気を付けて!

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