歯科治療9年の苦労ばなし  66

 

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 今日の写真は、孫達と食事に行った街中の写真です。久しぶりの都会でした。

 

 歯の方は、10月26日の予約までじっと待つのみです。前回が9月9日でしたので1カ月半

 

程開いていますので、その間に調子の悪いクラウンなどを、前に行った近所の歯医者で試し

 

に作り直してもらおうかと思ったのですが止めました。去年夏に民間の歯科へ行って酷い目

 

にあっています。その時、県の歯科相談所に行ってのですが、大学病院でないとこの治療は

 

無理だと言われましたし・・・。でも、治療がここまで来たら、後は民間の歯医者でもできそうな

 

気がついついして、誘惑に駆られます。

 

 今回は第一章二人目の主治医の ”19 象牙の塔を上り詰める人” です。 

 

              

 

 

            「歯科巡歴の記―歯科からの帰還」

 

     第一章  二人目の主治医

 

 

          十九  象牙の塔を上り詰める人 

  

 救急の歯科医が言ったように、歯には穴があいてヒビが入り割れていた。

 

 主治医は笑いながら割れていませんと言って、割れた歯をくれた。一分後にはばれる嘘だ。

 

どういう人格の持ち主なのだ。

 

 

 

 自分が歯を割ったことを私に隠したかったというのは分かる。治療ミスで訴えられたら困る

 

だろう。もし、私が次の予約の日まで救急外来へ行かず、次の予約の日に主治医が歯を抜け

 

ば、助手以外の誰にも知られずに済む。私も真相を知らないままで、歯を欲しいとは申し出な

 

かっただろう。

 

 あとで聞いたのだが、歯を抜くのは口腔外科の担当らしい。だから、「僕が抜いても良いで

 

すか」と確認を取ったのだ。私はそんな事情は知らないから、なんでわざわざ聞くのかとチラ

 

と思っただけだ。

 

 それにしても、根っこが割れた歯を一カ月以上放置しても、途中で痛くなるとは予想しなかっ

 

たのだろうか。それが不思議だ。主治医は立場上だろうが、いつも忙しそうだ。とりあえず

 

その場がしのげれば良いという態度が、習慣になっているのだろうか。

 

                                                

 

 ここまでは、私にも分からないことはない。が、ここからあとのことはまったく理解できない。

 

 事実を患者が知って、割れた歯も患者に渡すことになった。割れているかどうかは一分後に

 

明らかになる。それでも平然と笑顔で嘘を言う。信じられない。普通の人間の感覚では、そん

 

なことはしないだろうと考える世界に、私は生きている。

 

 その部屋にいる数十人の部下の歯科医や他の患者への面子なのだろうか。

 

 補綴科は歯科病院でも一番の大所帯で、数十人以上の歯科医を引き連れている。主治医

 

はそのトップの教授なのだ。大きな部屋なので初めのころは何人か教授がいるのかと思って

 

いたが、そうではなくて教授は一人だけだった。周りで治療する歯科医も、助手として付いて

 

いる研修医も全員が部下なのだ。

 

 今日は、私の右二つ目の診察台で“苦情係ではない”と言った歯科医が診察していた。

 

左四つ目の診察台には、先日の救急のときの女医さんがいた。この補綴科の診察室で

 

カルテをて詳しい事情を知っているのは、この二人と前回主治医の助手をしていた歯科医

 

それと血の付いた歯を洗ってくれた今日の助手の歯科医だけだ。あとは、歯周科の診察室の

 

歯科医数人が知っている。

 

 今日の助手の歯科医はまだ新米研修医だろう。四月に来て一カ月もしない早々に、

 

こんな場面に出くわすとは厳しいものだ。救急のときの女医さんは可愛い温和しそうな人だっ

 

たが、雰囲気が変わっていた。硬い暗い表情になっていた。こっぴどく叱られたのだろうと直ぐ

 

に判る。身から出た錆とは言え、あまりの変わりように可哀想になる。

 

                             
友人は私の話を聞いて、迷わず言った。
 
「そりゃあ、嘘でもそう言うでしょうよ。詳しく知っている人は少数だし、噂は陰で広がるだけ。
 
公の場所で教授自身が認めない限り、それは事実にはならないんだから」
 
「けどカルテに、割れたと書いてあるんよ」
 
「カルテを見た年配の人は苦情係の先生だけでしょう?」
 
「あ、そうか。ポールが折れたというのは書かんと、ただ歯が割れていると書いてるだけ。
 
割れた原因も書いてない。これでは、なんで割れたか事情は分からへんわ」
 
「でも、割れたというのは、どうして書いてあるのかしら」
 
「それは、次に抜くんやから、抜く理由がいるもん。理由もなく歯を抜いたら、
 
それこそ傷害罪になるやろ」
 
「ああ、そうか。きちんと考えてるんだ」
 
「他の先生が、教授のカルテはろくに何も書いてないから、何をしたのか分かれへんと
 
言ってたけど、必要なことは書くんや」
 
「よけいなことを書かない方が、証拠として残らないとも取れるよね。
 
だけど、自分にとって必要なことや都合の良いことは、しっかり書く」
 
「やっぱり賢いんや」
 
「そりゃ、教授になったんだから抜け目ないでしょうよ」
                                   
補綴科のあとに歯周科の予約が入っていた。
 
「抜いた歯をいただきました。残っていたのは根っこだけなのに、これ長いですよね。
 
根は深くまであるのですね。上に見えている部分より長いくらいなので驚きました」
 
「そうなんですよ」
 
「……やっぱり、前回ここの救急の先生が仰ったとおり穴が開いて、
 
そこからヒビが入っていました」
 
 私は詳しい経緯は話さずに、ビニール袋に入れた歯を歯周科の担当医に見せた。
 
「ああ、なるほどね」
 
 担当医はビニール袋を手にしながら口の端で苦笑いをした。その後も治療しながら、なんと
 
く含み笑いをしているような顔だった。
 
「先生に半年もかかって治療していただいて、やっと痛みが取れ、ブリッジが作れると思った
 
途端、抜くことになって本当に残念です。ショックでした」
 
「それで、ガス抜きにクレームを言いに行ってこられたのですね」
 
 話題にしたくてしたくて仕方がなかったという調子だ。私が補綴科で使った言葉とまったく
 
同じ言い回しをする。
 
「えっ! ええ。あの係の先生にはご迷惑だったかも知れませんが」
 
「あの先生は心配しなくても、そんなことを気にする方ではないですよ」
 
 事務員の人達同様に、苦情係でないと怒った歯科医を信頼しているようだ。
 
「主治医の先生に苦情を申し上げていたら、治療時間がなくなりますので」
 
「そうですね。主治医の先生には治療をしっかりしていただかないとね」
 
 なんとなく気になる口振りだ。
 
「カルテに、先日のこと書いてあるのですよね?」
 
「ええ、これで、これからは、主治医の先生も積極的に治療をしなければならないでしょうね」
 
 積極的に治療とは、どういう意味なのだろう。“苦情係”の歯科医とは気まずい終わり方をし
 
が、カルテには私の今後の治療にプラスになるようなことを書いてくれているのだろうか。
 
主治医がカルテを読んで、あれほど憤慨するほどだったのだから、きっとそうに違いない。
 
歯周科の治療が終わった。担当医に聞いてみた。
 
「先生、さっき、ガス抜きと仰いましたよね。その言葉は、私が主治医の先生に申し上げた
 
ときに使ったのですが、カルテに書いてあるのですか」
 
「ええ、“ガス抜きできて、すっきりしたと言った”と書いてありますよ。アハハハー」
 
「やっぱり、そうですか。アハハハー」
 
 私も思わず笑ってしまった。
 
 詳しいことはろくにカルテに書かない主治医が、こんなことだけはバッチリ書くのだ。
 
私が苦情を言いに行ったのは治療内容に苦情を言うためでなく、単に私が感情的になって
 
自分自身のガス抜きのために行っただけだと言いたいのだろう。自分には責任がないと。
 
やっぱり細かいところに目が届く策略家なのだ。
                                
友人が見送ってくれた。             ボールが上から落ちてきて、また上に帰るカラクリ仕掛けに見入っています
 
「じゃあ、運転、気を付けてね。顔色悪いけど大丈夫? 奥歯抜いて出血してるし、
 
スピード出さないでよ」
 
「うん、今日は付き合ってくれて有り難う。じゃあ、また電話するね」
 
 帰り道、車を運転しながら、ついつい考えてしまう。
 
 割れたのを言い忘れていたと言えば、済むことなのに。
 
 今日の診察のとき主治医は、私が苦情を言いに行ったのはカルテを見て分かっていたが、
 
救急で歯が割れていると教えられていたのは知らなかったのではないだろうか。苦情係の
 
科医はそのことについてはカルテに書いていなかったのだろう。だから、主治医は事前にどう
 
返答するかを考えていなかった。で、とっさにバカな言い訳をしてしまった。そんな気がする。
 
 それに“苦情係”の歯科医の先日の態度にも腑に落ちないところがあった。最初はセールス
 
マンかと思うほどの愛想の良さだったのに、途中から急に態度が変わった。私は救急の対応
 
に苦情があると言っているのに、今までの治療内容についてやたら突っ込んで話したがった。
 
変な感じがしたのだ。
 
 事務の人の話によると、主治医の教授は他の大学出身で、この病院の副院長。苦情係の
 
歯科医は医長で、この大学出身だ。一つの診察科にはトップに教授がいて、准教授、医長と
 
続く。そんな人間関係が見え隠れするような気がした。歯周科の歯科医はこの大学の出身ら
 
しい。補綴科の救急の女医さんは、たぶんこの大学の出身ではないだろう。なんとなく雰囲気
 
が違う。研修にだけ来ている私立の歯学部出身のように見えた。
 
 にこやかに笑いながら割れていないと言って割れた歯をくれた主治医の顔が、大勢の歯科
 
医や患者をバックに微笑んでいる主治医の姿が、薄紙に描いた絵のように虚ろに揺れる。
 
三年間治療してもらっているが、事情を想像することはできても、その心情を理解するのは、
 
私には不可能だ。
 
 
 
 その夜は、指示をきちんと守った。出血して止まらなくなるといけないので、お風呂に入らず
 
シャワーだけ。血行が良くなるようなことはしない。抗生剤、鎮痛剤を忘れずに飲む。歯磨き
 
はしないで、うがい程度にする。
 
 けれど、奥歯を抜いたせいなのか、主治医の態度へのストレスからか、熱を出して寝込んで
 
しまった。
                                   つづく

 

 

 

 

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歯科治療9年の苦労ばなし  66 への12件のフィードバック

  1. パンチ より:

    嘘つくの単に医療訴訟避けてるんじゃないの?

  2. main より:

    うーん、やはり「白い巨塔」構造のままなんでしょうか?ちょっと、考えさせられますね。抜歯後、お大切にとしか言えません。

  3. booo より:

    白い花さんのドキュメンタリーを見てから、ホントに医者という前に、人間性を疑う医者たちばかりで、なんか怖くなるくらいですね。。。(; ̄_ ̄;)また記事とは関係ないのですが、念のために参考にしてください。自分のPCで見ると、この記事のところどころで太字になったり、ならかなったりしています。もしくは、太字ではなく、ところどころでフォントがランダムに変わってるのかな・・・・?白い花さんがあえてそうしてるのかな?ココ見てもらうと分かると思うのですが、、、http://1rdiea.bay.livefilestore.com/y1pxdy4qvJ9OrEeuSi3GdV7inPJiu4QoBYuqLbKxW06iyN6_phpXb1Fdtf8AgaybROtItbs1zGJryZBj2Tw83ONo9yCGGfhhFy8/siroihana.jpgこの記事の一部をキャプチャーした画像です。途中で太字から、普通の太さに変わっているのが分かると思います。もちろん、強調する意味で太字を所々に使うのは分かりますが、この記事の太字の使われ方を見ていると、そういう意味で使われていないようなので。。。参考になるようでしたらいいのですが。。。おそらく、文字数の制限でいろいろと設定をいじって、ご苦労されて記事を投稿しているのだと思います。MSN、困ったものですね。。。(・_・)

  4. 洋子 より:

    このような状況にあってはストレスが溜まらない訳が無いという感じですよね・・・それも相当のストレスが・・・歯の治療が第一目的なのに人間不信で精神まで蝕まれるなんてたまったものではないですよね。

  5. たんぽぽ より:

    ガス抜きできて・・・・そんなことを書いているなんて、ひどいですね~驚きました。私は悪いけれど、その病院、いやだな~・・・・

  6. ぷち より:

    こんにちは・・・(^-^)カルテにガス抜き・・?ドイツ語でわざわざそんなことが書いてあるなんて。。。何を考えているのでしょうね・・・これが教養ある(と思われている)お医者様のすることかと呆れてしまいます。

  7. 乙女 より:

    歯医者さんなら誰が抜いても良いのかと思っていたけど、大病院だと口腔外科の先生が抜くんですね。読んでいて白い花さんのストレスが溜まるのが心配だわ。

  8. ミッキー・フォール より:

    こんにちは~!『医者とあるべき姿』について考えさせられました。医者との信頼関係が崩れたときに、患者は奈落の底に落とされたような気持ちになるのは当然のことです。主治医ともなると、そのことが分からないといけないですよね!自分の面子、自我意識の押し付けで治療が上手くゆくのであれば、医者はいらないと思いました。お孫さんたちとの食事は楽しかったですか~??ダイヤの指輪、かなり大きいですね!^^

  9. mako より:

    (o^0^)o コンバンワァ♪お久しぶりですねまだ、歯科医通い続いていたのですね^^;( ゚ー゚)( 。_。)ウン♪、ストレスでぐわい悪くなるのも解りますね1分後には嘘と解るのに、嘘を貫き通す^^;;頭のいい人でしょうが、頭がいいとは思えませんね^^;で、肝心なこと書かなくて、不必要なことは書く?お大事にね

  10. Misa より:

    こんばんは☆オトナの歯って、もう二度と生えてこないのに、歯医者さんにとっては、歯を抜くことがあまりにも日常になりすぎていて、患者さんの一度しか生えない歯、という認識がどこかへ飛んでいってしまったのかもしれませんね。それにしても、こんな風にあからさまに自分の面子を大事にするなんて。白い花さんがその日熱を出してしまったのは、精神的なものもあるような気がします・・・(>_<)・・・

  11. 白い花 より:

    皆様、コメント有り難うございます。思い出しても、この頃はひどい状態でした。歯自体ではなく、人間関係で疲れきっていました。こんなテレビのドラマなみの人に出会ったのは初めての経験です。

  12. パンチ より:

    大阪たいしたことなかったけど、東京ほぼ直撃したみたいですね。

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