歯科治療9年の苦労ばなし  69  

 
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   今日の写真も、近くの河原で撮ったものです。秋晴れの青空の下、のどかで平和に見える
 
 風景ですが、ススキとセイタカアワダチソウがしのぎを削っています。植物遷移の順で言えば
 
 セイタカアワダチソウの天下もそろそろ危うくなって、次に来たススキが勢力を伸ばしている
 
 ということらしいです。
 
  歯のほうは、いよいよ1カ月半以上も待った予約が来週の月曜日です。待ちきれなくて、
 
 近くの歯医者へ替わろうかと何度思ったか分かりません。
 
  今回は第一章の ”22 クラウンを三本別々に” です。
                              
 
 
        「歯科巡歴の記―歯科からの帰還」
 
 
  第一章  二人目の主治医
 
       二十二  クラウンを三本別々に 
 
 
 外そうとしても外れないくらいにしっかり留めたはずなのに、右下の三個続きのクラウンが
 
また外れた。
 
 
 
 救急で外来へ行く。
 
 今回は主治医が診てくれた。クレームを言いに行ってから、救急のときにも主治医が出て
 
来きてくれることがある。
 
「先生、これは重すぎて、すぐ外れるのではありませんか? 
 
一本ずつバラバラのにしていただけませんか」
 
 この三個続きのクラウンは全体が分厚い鉄の板みたいで、重いし形も良くない。上の歯と
 
の噛み合わせも悪い。バランスが少しでも崩れると、クラウン自身の重みで外れ落ちるよう
 
感じていた。特に、上下の歯でなにか食べ物を噛もうとして、擦り切るように歯が動いた途端
 
に外れるのではないかと私は思っていた。だが、主治医にそこまでは話さなかった。
 
「そうですね。次回の予約のときに型を取って、一本ずつに作り直しましょうか」
 
 あっさりと作り直すことになる。この三個続きのクラウンはいくらなんでもお粗末すぎると、
 
主治医自身も思っていたのだろうか。一カ月以上も技工士へのオーダーを忘れて、一、二日
 
で急いで作ったものだ。体面を繕うため、間に合わせにとりあえず作ったものだったのかも
 
知れない。
                       
 
 三個続きのクラウンが外れたので、右下の裸の第一大臼歯を鏡で見ることができた。右側
 
の仮歯は初診の頃に一度外れたきりで、その後四年程は仮歯を被っていない状態で見たこと
 
がなかった。
 
 鏡には、コーヒーのアメリカンくらいの薄茶色に全体が変色した歯が映っている。この歯は
 
金属の仮歯になる前は、三年以上もプラスチックの仮歯を被せていた。仮歯用のプラスチック
 
は水分などを完全に通さないわけではなく、長く付けていると歯に良くないらしい。
 
 その奥横の第二大臼歯の側面にも丸く茶色になった部分が見える。歯の上に乗せるだけの
 
部分クラウンを二年前から被せていたが、クラウンの端っこになる辺りにその茶色はあった。
 
てっきり虫歯になっていて治療が必要かと思ったら、茶色に変色していてもその部分が欠け
 
て凹んでいなければ、虫歯として処置する必要はないそうだ。補綴科の主治医も歯周科の
 
担当医も、大したことではないからこのままで心配はないと、これには同じ意見だった。
 
 隣り合って並ぶ裸の二本の歯を眺めていると、惨めな姿が目に焼き付いてしまった。
 
治療の都合上、致し方のない結果なのだろうか。改めてこの七年のことが思い出され、
 
惨めな歯は私自身に重なっていよいよ惨めに見えた。
 
 いつもは、自分の歯はなるべく見ないようにしていた。歯列がガタガタの汚らしい歯を目に
 
すると、気が滅入る。嫌なものは見ない。考えない。土俵に乗らない。これが心を平和に保つ
 
私ができる最良の方法だった。
                          
 
 前回の予約から二週間後、救急外来からは一週間後に次の予約が入っていた。いつもは
 
予約と予約のあいだは早くても一カ月は開くのに、なぜか今度は詰まっている。これもクレー
 
ムを言いに行ったおかげなのだろうか。
 
 その予約の日が来た。
 
 約束どおり、右側三本のクラウンを作り直すために型取りをする。上下の歯列全体の型
 
取り、以前同様に上下歯列の噛み合わせの型を二回取った。
 
 ところが、二回目の途中で材料が足りなくなった。水色の柔らかい粘土のようなプラスチック
 
をチューブから絞り出して、下の歯列の上に奥の端から順に載せる。左下の奥歯から始めて
 
真ん中の前歯を通り過ぎ、右の奥歯にかかったくらいでチューブの出が悪くなったのだ。
 
たまたま、その日は助手が手鏡を貸してくれていた。見ると、肝心のクラウン三本を作る
 
右奥歯あたりには、水色のものが少ししか載っていないではないか。
 
「先生、これではきちんと型が取れませんよね」
 
「いえ、材料が足りなくなっただけです。足りないので奥歯のところが凹んでいますが、
 
大丈夫です」
 
「そうですか?」
 
「じゃあ、これで作りますから」
 
 主治医はにこにこ顔で、固まったプラスチックを助手の歯科医に渡した。
 
 一つ目があるから良いのだろうか。それならどうして、念を入れて確認のためにと、今まで
 
二個も型取りをしていたのだろう。ただし、鏡で見ていたのは今回が初めてだから、以前は
 
どうなっていたのかは分からない。いつもこんな調子だったのだろうか。
 
                                   
主治医は店仕舞いを始めた。
 
「左の仮歯が割れていますし、スプリントの調整がまだ残っていますが」
 
右のクラウン三本の型取りはすませたが、これで治療全部が終わったわけではない。
 
「ああ、まだあるのか。ちょっと急いでいるから次にしてくれますか」
 
 苦笑いをしながら、さっさとカルテのあるカウンターの方を向いてしまった。
 
「口の中にプラスチックの切れ端が残っているから、取ってあげて」
 
 助手にそう指示を出しただけだ。
 
「では、お口のお掃除をしますので、診察台を変わってくださいますか。こちらへどうぞ」
 
 助手が案内した診察台は、部屋の隅っこの少し離れたところにあった。
 
「主治医の先生が駄目なら、あなたが仮歯の修理をしていただけますか?」
 
「ああ、ちょっとお待ち下さいね。教授に聞いてきますので」
 
 研修医になりたてのような、かわいい女医さんだったが、仮歯が壊れて外れたままで
 
一カ月我慢するよりは、ましだろう。
 
「許可がでましたので、私がします」
 
 苦労しながら仮歯の修理をして付けてくれた。どれくらい保つだろうか。
 
                         
 
 病院から帰宅して遅い昼食を取っていると、助手の歯科医から電話が入った。
 
「今日、型取りをしたクラウン三本のことですが、保険適用にはならないそうです。
 
了解していただくようにと教授が申していますので」
 
「えっ!? どうしてですか?」
 
「詳しいことは分かりませんが、すでに一度作っているからとか」
 
「でも、嵌めて一カ月様子を見て、良くなかったので作り直すことになったのですよ」
 
「そうですか。ちょっと待って下さい」
 
 若い助手では詳しいことは分からない。診察時間終了後に主治医から直接電話が入ること
 
になった。
 
 保険で一度作ると、二年間は保険の適用がない。しかし、二年前に保険で作ったときは
 
一度の支払いで三度作り直してくれた。しかも、これを持っていると合うまで作り直せると言っ
 
て、半券のようなものもくれていた。結局、そのときは三回作り直してくれたが、それでも合わ
 
なくて、合わないままで二年経って、ようやく今回の作り直しに漕ぎつけたのだ。料金は新た
 
に払った。今回は以前にも増してクラウンの出来が悪いのに、作り直しに料金がいるなんて
 
ことはないはずだ。
 
 一時間ほどして、主治医から電話が入った。
 
「もしもし、僕は保険の適用があると思っていたのですが、事務からクレームが入りまして。
 
三カ月も口の中に入っていたものを、今さら作り直すのなら代金が改めて要るのです」
 
「はっ!? なにか勘違いなさっているのではないですか? 一度目の型取りは三月ですが、
 
先生がお忙しくてオーダーをお忘れになって、クラウンができて嵌めたのは四月の末です。
 
その後しばらく様子を見て、良くないので作り直すということになって、
 
今日、型取りをしていただいたのですよ」
 
「ああ、そうでしたっけ。でも、一度保険で作ると二年間は保険の適用がないのです。
 
後は自費になります」
 
「作ったクラウンが合わないのは医者の責任で、患者の責任ではないと思いますが」
 
「ええ、でも、作るたびに技工士に加工代を払わなくてはならないのです」
 
「それは、そちらの問題で、患者に関係のないことではないですか」
 
「事務が言ってくるもので……」
 
「じゃあ、私が事務の方へ直接電話して、掛け合ってみましょうか?」
 
 こう言うと主治医はきっと困るだろうと思って、わざと言ってみた。きっと事務には、自分が
 
オーダーを忘れて、二カ月近くも経ってからクラウンがやっとできたのを内緒にしているに
 
違いない。
 
「いえ、いえ、結構です。よけいに、ややこしくなりますので。
 
分かりました。仰るとおりにします」
 
「じゃあ、いろいろご苦労をおかけしますが、宜しくお願いします」
 
 作ったクラウンが合わないのは歯科医の責任に決まっている。しかも、自分がオーダーを
 
忘れて遅くなって三カ月も経ってしまったのだ。カルテには、三カ月も口の中にクラウンが
 
あったと受け取れるような書き方をしているのだろうか。それにしても、事務の人に指摘され
 
て自分までそう思ってしまうとは、患者は一人でないとは言え、どういう記憶力なのだ。
 
 少しの押し問答で向こうが折れた。というより、“割れた歯の嘘“以来、私の構えが頑丈に
 
なったのだろう。それに、あいかわらず仮歯も壊れたり外れたりで、下手に出るのにも
 
ほとほと嫌気がさしていたのだ。
 
 
 
 その翌日だった。作り直すクラウンの料金のことが一段落したとほっとしていたら、
 
若い歯科医に修理してもらった左側の二個続きのプラスチックの仮歯が、割れて外れた。
 
作って二日目だ。またまた救急外来へ行かなくてはならない。
 
            つづく
 
 
 
 
 
 
 
 
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歯科治療9年の苦労ばなし  69   への13件のフィードバック

  1. sakura より:

    こんにちは。セイタカワダチソウって繁殖力旺盛なのにそれを上回るのがすすきなんですね~今回は強気に出られて良かった~って思いました。おっしゃる通り、医師の都合なのに保険適用外だなんてひどいですものこの調子で少しずつでも気丈に振る舞えば医師にも変化が表れてくるかも…

  2. ちえみ☆ より:

    何て言うか納得出来ない事ばかりですね。。。(-_-;)まずは患者さんがどれだけ大変かって言うことを考えて欲しいですよね。すすきいいですね~(^O^)/                       

  3. hulala より:

    こんにちはススキの次は何でしょうね。今日は朝からセイタカアワダチソウを採ってきて草木染めをしました。木綿を染めるので呉汁処理をしてからの草木染めです。落ち着いた黄色に染まりました。

  4. パンチ より:

    プラスティックの義歯はもたないね、保険でできるけど。

  5. たんぽぽ より:

    苦労が絶えませんね。早く苦しみから抜け出せるといいですね。

  6. 洋子 より:

    ススキが明るい日差しを受けていて綺麗ですね。大きな組織は行き届いていないことが多いですね・・・と言っても、町医者にもとんでもない輩がいましたっけ・・・

  7. ぷち より:

    こんにちは・・・(^-^)ススキの写真、素敵ですね!今年お月見もちゃんとしなかったので、来年はちゃんとススキを活けなくっちゃ・・と思ってしまいました。まったく仕方の無い歯医医ですね・・・でも、白い花さんのキッパリした態度にちょっとスッキリしました。まだまだ前途多難の様相ですが・・・(><)

  8. さんぽ より:

    こんにちは。どれも、秋の風景フォトが素敵ですね~一日も早く 歯のトラブルから開放されて欲しいと願うばかりです。

  9. 乙女 より:

    ススキが風になびいて綺麗だわ\(^o^)/まだ苦難は続くのかしら?早く歯の苦しみから抜けられるといいわね。

  10. Tosh より:

    こんにちは 白い花さん♪ 果てしない逃走劇のようですね。 僕も自分の歯が悪くなったら、そのように型取李の繰り返しをしなければならないのでしょうか? すごい不安を感じます。 歯が、特に奥歯がガタガタになったら、物が噛めないですからねえ。 今現在僕の奥歯は被せた状態で10年以上使っています。 歯磨きは出来るだけ毎食後にしています。 右の上の奥歯には、肉類が挟まることがよくあります。 抜いて、入れ歯ってことを考えるとちょっと恐いですよ。 秋。 こちらはセイタカアワダチソウがまだススキに勝っています。 今日のお天気は薄雲がかかっていますが、爽やかな秋晴れと言えるでしょう。!(^~^)!

  11. booo より:

    白い花さんのご近所の写真なんですね!ススキが太陽の光を反射してキレイですね!(・∀・)空気もおいしそうなのが見ただけで感じられる、こんな長閑な景色が近くにあるっていいですね!歯の方も早くすがすがしくなるといいですね!

  12. main より:

    いよいよ秋ですね、ススキも もうすぐ冬だよ~と告げてるみたいですね。今年はインフルエンザにも注意しなきゃ、愛知も最近急激に感染者が増えてるそうです。病院で拾った人も多いかと、ご自愛下さいね(*^-^*)。

  13. 白い花 より:

    皆様、コメント有り難うございます。強気に出るのは大事だなあと、つくづく思いました。なかなか終わりそうにないので、嫌になって自暴自棄になりそうですが、そんな時は、鎮痛剤を3時間おきに飲んでいた頃、天井を眺めて寝ていた頃、松葉杖をついてやっとのことで通院していた頃を思い出すようにしています。それに比べれば、確実に良くなっていますから。ここまで来ると、精神力勝負だと自分に言い聞かせています。

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