歯科治療9年の苦労ばなし  71

 
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  今日の写真は、ちょっと珍しい大護摩法要のものです。近郊の伽耶院という修験道のお寺
 
毎年体育の日に催されます。たくさん撮ってきましたので、何回かに分けて紹介しますね。
 
             (伽耶院のURL http://www.city.miki.lg.jp/bunka/kayain.html
 
 歯の方は次の予約まで、また1カ月あまり・・・
 
 今回は、第一章 ”24 ダブルブッキングで出会った患者” です。 そろそろ第一章も終わ
 
りに近づきました。
 
           
 
 
 
          「歯科巡歴の記―歯科からの帰還」
 
 
     第一章  二人目の主治医
 
 
          二十四  ダブルブッキングで出会った患者 
 
 
 
 救急で診てもらった歯科医が飛び抜けて上手な人だった。物腰も優しい。やっと見付けた。
 
これからは、この人に頼めば良いのだと安堵する。  
 
 
 
 主治医の予約の日が来た。
 
「お手上げですわ」
 
 えっ?!
 
  診察途中で主治医が突然言った。捨てばちな言い方だ。 私だって、主治医を替わって欲し
 
いと思っている。だが、急にそんなふうに言われると戸惑ってしまう。はい、そうですかとも言
 
えない。
 
「でも、先生にそう仰られたら……、じゃあ、私はどうすれば良いのですか?」
 
「教授だからとかではなく、とにかく、もう僕にはどうして良いか分かりません。お手上げです」
 
「先生が駄目なら、次はどこへお願いすれば良いのでしょうか?」
 
「……」
 
「どこか他を紹介してくださるのですか?」
 
「……他の病院とか、この病院の他の科とかへは紹介できませんが、
 
この教室の中の誰かだったら……」
 
「はあ!?」  
 
 結局、それ以上具体的な話にはならなかった。  
 
 その日は右側の金属の仮歯には手を付けず、救急の上手な歯科医が付け直してくれた
 
ままなった。噛み合わせの削り直しもしない。左側の二本続きのプラスチックの仮歯の調整
 
だけで終わる。
 
「噛み合わせを削り直してあげるという人がいたら、その人にやってもらえば良いでしょ!」  
 
 帰り際、唐突に険しい声で主治医が言った。やっぱり、前回の救急の歯科医との会話が
 
聞こえていたのだ。  
                          
 次の歯周科の予約の日。
 
 つい先日調整してもらったプラスチックの仮歯の調子が悪いので、補綴科へ救急で診てもら
 
おうと寄った。しかし、「歯周科のついでになんか来ても」と、若い救急医は話だけをたっぷり
 
して治療はしてくれなかった。押し問答をするのにも辟易している。腹が立ったが、そのまま
 
病院を後にする。
 
 三日後にもう一度出直した。また一日つぶして交通費五千円、往復四時間のドライブだ。
 
 朝一番で救急の予約を入れたときは、主治医の診察の空きがあると聞いた。それなのに、
 
行ってみるとダブルブッキングで診てもらえない。しばらく待てば、助手の歯科医が代わりに
 
すると言う。もう呆れて、根負けして、廊下の古びたベンチに腰掛けて待っていた。
 
 たまたま横に座った人が、同じ主治医の私とダブルブッキングになった患者だった。思わぬ
 
チャンスだ。尋ねたいことがあった。
 
「前々から同じ主治医の患者さんに、どんな具合なのか一度お聞きしたいと思っていました。
 
今までどなたにもお会いできず、今日やっと、あなたにお会いできました」
 
「えっ! 私もまったく同じ思いでした」
 
 この返事に驚いたが、むしろ安心して話ができた。治療が巧くいかず、私だけが主治医と
 
相性が悪いのかと悩んでいると打ち明けると、まったく同じだと言うではないか。前回嵌めた
 
クラウンの調子が悪くて、今日は救急で来たというのも似ていた。
 
「あ、私の番みたいです。お話しの続きはこの電話に」 
 
  話をもっと聞きたかったが、その人が呼ばれた。立ち上がりぎわに、すばやく名刺を私の
 
バッグの外ポケットに滑り込ませてくれた。そうするつもりで、すでに準備していたのだ。
 
                                                  
 その夜、貰った番号に電話した。
 
 病状は私とは少し違って、それほど複雑ではなさそうだ。が、主治医の治療技術や態度に
 
は、まったく同じ思いで、歯科医を替えた方が良いのか、ずっと迷っている。替えるにしても
 
どこへ行って良いのか分からない、と言うではないか。
 
「そうなんですよね。私もまったく同じです」
 
「同じ思いの人と話ができて、私もストレス発散になりました」
 
 話が弾んで、三時間以上の長電話になった。
 
 治療が巧くいかないと、たいていの患者は自分が悪いのだろうかと自分を責めるという。
 
私もここまで拗れさせた開業医を恨んでいるし、大学病院の主治医にも腹を立てているが、
 
どうしてこうなるのだろうと最後には自分を責め、惨めな気持ちになる。彼女も同じ状態の
 
ようだ。自分の性格が悪いのか、他の人とはなにか違うのかと思ってしまうのだ。 似たような
 
境遇の人と話ができ、様々のことを教えあえて助けになるのはもちろんだが、それ以上に
 
精神的に救われる。主治医とも自分だけが相性が悪いわけではなさそうだと、気が楽になっ
 
た。たった一人の患者の話だが、あまりに同じような思いなのだ 
 
                          
 
 次の予約が来ないうちに、プラスチックの仮歯がまた外れた。
 
 痛みもある。病院へ電話を入れた。 主治医は時間が取れないので、助手の歯科医が診る
 
言う。救急で出会った上手な先生に診てもらえないかと尋ねると、その歯科医の外来の日
 
ではなかった。
 
「だったら、その先生が外来にいらっしゃる日に、予約を取ってくださいませんか。
 
その日まで待たせていただきますので」
 
「それはできません。主治医以外の先生の予約は取れないことになっているのです」  
 
 以前、一人目の主治医のときには、あっさり教授の予約は取ってくれたし、三カ月前には
 
苦情係の歯科医の予約も取れたのに。
 
「他の先生の予約を取るには、どうすれば良いのですか?」
 
「予約は主治医だけしか取れません」
 
「じゃあ、その先生に主治医になっていただけますか?」
 
「今の主治医の許可がないと、そんなことはできません」  
 
 前回の救急のとき診てもらった助手の歯科医は「主治医は患者の希望次第だから、替えて
 
欲しいのなら申し出れば良い」と教えてくれた。事務の人は滅相もないと言ったが、患者の
 
ほうから主治医を替えることができるのだ。当然のことだろう。ただし、これから主治医本人の
 
許可を取らなければならない。
 
  前回の診察時、主治医は「この教室の中の誰かなら替わっても良い」と言った。「削ってや
 
という人がいれば削ってもらえば」とも言い捨てた。“割れた歯の嘘“以来、私も嫌な気分を
 
引きずっているが、主治医もわだかまりが尾を引いているのだろう。あれ以来、態度がぎこち
 
ない。私が上手だと思う歯科医は「いつでも診てあげる」と言ってくれた。 条件が整ったのだ。
 
このさい、主治医を替わってもらおう。
 
「今日、主治医の先生は外来の診察室にいらっしゃるのですか? いらっしゃるのなら、
 
治療ができなくても少しお話しはできますか?」
 
「教授は他の患者さんを診ますので、無理です」
 
「一分でも二分でも、結構ですので」
 
「ああ、それなら良いと思います。伝えておきます」  
 
                              
 
 病院へ着くと、助手の歯科医に診てもらう前に主治医の診察台を訪ねた。
 
「先生、先日のお話ですが、主治医を替わっていただけますか」
 
 他の患者が診察台に座っている。私の言葉を聞いて不安に思ってもいけない。できるだけ
 
短い言葉にした。
 
「ああ、良いですよ」  
 
 作業の手を止め、苦しそうな顔で私の顔をチラと見たが、主治医もあっさりと返事を返した。
 
周りの歯科医や患者の手前があるのだろう。私が希望の歯科医の名を告げると、手配して
 
電話をくれるという約束になった。
 
 だが、約束の日に電話はかかってこなかった。  
 
                   つづく
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歯科治療9年の苦労ばなし  71 への16件のフィードバック

  1. САБУРО(サブーラ) より:

    こんにちは。悔しくて惨めな思いをしたときに、腹が立つと同時に後で少し冷静になり、自分の行動、態度でこういう結果になったのかと今度は自分を責めようとする。そこに、同じ境遇の人に出会い、忌憚無く話をして共通の考えや思いをしていることが確認できたときに、精神的な安心感を得る。そういったことは確かに有ります。また、続きを読ませていただきます。

  2. hulala より:

    こんばんは本当に長い歯科治療ですね、ただ長いだけでなく不信感や不安など精神的な疲れも何年も続いていたのですね。大変でしたね。

  3. たんぽぽ より:

    同じような思いをしていた人がいたのですね。いろいろな話ができてよかったですね。

  4. Misa より:

    こんばんは☆同じ思いを抱いているひととお話ができたことはよかったですよね。自分だけなのかもと思うと余計不安になってしまうけれど・・・ただ、今回も記事を拝見していてやっぱりどんどん辛くなってしまいました。せっかくいい展開になるかと思っていたけれど…(>_<)

  5. 洋子 より:

    なんで自分だけが、と思ってしまいがちな状況で似た境遇の人と語り合えるのは精神的な励みになりますよね。主治医交代、またなにやらありそうな雲行きですね・・・

  6. booo より:

    同じ境遇の人とは、出会うべくして出会ったのでしょうね。とにかく、白い花さんの気持ちの中がかなり軽くなったと思います。それにしても、先に進めば進むほど、たちの悪い病院ですね。。。電話がないのが気になる。。。(; ̄┏_┓ ̄;)

  7. Tosh より:

    おはようございます 白い花さん♪ いよいよ主治医が替わるのですね。 しかも、同じ思いの患者さんがいたのですね。 教師に上手下手があるように、医者にも上手下手はあって当然かもしれませんが、 医者ですから、それでも下手なりに最低限できることがあると思うのは僕の期待しずぎなのでしょうね。 こちらでも、嵌めた歯がすぐ外れたという話は時々聞いたことがあります。 だからある程度の評判を元に歯医者さんを選んでいることは選んでいますね。 それにしても自分から『お手上げ』宣言をするなんて、初めて聞く話です。 前回のことを耳にしてたからの言葉でもあるのでしょうね。 これで、あなたにとって、良い方向に向かうのであれば、この上ないのではありませんか! 次回以降が楽しみです!(^0^)! 『冬ごもり』―――僕は『冬眠』と称していますが、            僕も冬場は外出は控えめにしています。            寒い日に起こした病気なので、『寒い日』が恐いのです。            『コタツムリ』とまではいかなけれど、暖房を入れてヌクヌクしています!(^。-)/

  8. mako より:

    こんにちわ♪♪~大護摩法要、修験者さんの人数が凄いですね道内でこのような光景を見ることはないですねそこが修験道のお寺ということも有りますが皆さん無病息災を願ってのお参りなのでしようね同じ思いの患者さんに出会ったのですねそれは先ず良かったことですが患者が主治医を替えるのは本来自由なはず其れが大学病院となると教授・・・・・から助手へ・・・・・良いですよと了解してくれたものの・・・・・・

  9. さんぽ より:

    嬉しい出来事ですね・・患者さんと知り合えた事・・・勇気がでますよね!何より自分自身が納得でき、心が安定しますよね。これも心の治療には大切な事・良かったです。あとは、希望の歯科医からの電話か来ることを祈るばかりです。

  10. ちえみ☆ より:

    同じ辛さを話せることって本当に気持ちがホッとしますよね。同じ辛さは同じ辛さを持っている人にしかわからないもんね。今度は、いい主治医の方に出会えればいいですね。

  11. Chieko より:

    おはようございます(*^_^*)同じような気持ちの方と出会えたんですね^^またお話したくて名刺を渡されたのでしょうね。それにしても、主治医は頭固すぎますね(;一_一)

  12. ガオゾン より:

    こんにちわ中国で入れた義歯、中の骨が固まる前に急いで入れてしまい、結局今になって歯茎と義歯の間に隙間が出来てしまいました。3日で直してくれるといってますが、3日間前歯6本無しで暮らすのは。日本で作ったプラスチックの仮歯、捨てなきゃよかったと思っています。

  13. ぷち より:

    こんにちは・・・(^-^)これから良い方向に向かうのかと思っていましたのに・・・でも、同じ境遇の患者さんとお知り合いになったのは少し心強いですよね・・・雲行きが怪しくなりそうで、心配ですが・・・

  14. sakura より:

    こんにちは。同じ悩みを抱えていた患者さんとお知り合いになれたことはせめてもの救いでしたね。いよいよ主治医を変えてくださるのかと思ったらまた障害が立ちはだかったのでしょうか…交通費5千円で往復かかった時間を考えると第二の人生を歯科治療に…というお気持ち納得できます。これらはみな真実ですものね~医者はたくさんいますが、良い医者と巡り合うのは宝くじにでも当るような確率なんでしょうか。。本当に大変なことですね。

  15. 乙女 より:

    主治医の「お手上げですわ」こんな事ってあるの?じゃあ患者はどうすればいいのかしら(T_T;)プンプンストレスが溜まるぅ~~~でも仲間(?)にめぐり合えて話が出来たのが良かったわ。次回は白い花さんの気に入った主治医と変われるといいね。

  16. 白い花 より:

    皆様、コメント有り難うございました。同じような境遇の方と話ができたのは、本当に救いでした。でも、この後、思いもしない展開になります。私の苦難は老後に残されていたような気がしてきました。逆に、若いときはその分、幸せだったのでしょうね。

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