歯科治療9年の苦労ばなし  87

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 今日の写真の椿は、近くの植物園で撮りました。でっかい花で、ちょっとけばけばしいので
 
すが、元気がもらえそうな気がします。
 
 歯は次回の予約は3月はなくて、4月の初めです。
 
 今回は、第三章 大学病院から民間病院へ の ”9 突然の診察中止宣言” です。
 
                              
 
 
          「歯科巡歴の記―歯科からの帰還」
               
    第三章  大学病院から民間病院へ
 
        九  突然の診察中止宣言
 
 
 
 スプリントを付けても外しても両顎は痛いし、筋肉は緊張する。食事のときはスプリントを
 
外していたが、左右とも奥歯が低すぎて満足に噛めない。下顎を後ろに引かないと上下の
 
奥歯が届かないので、食べ物を噛むときはつい下顎を後ろに引いてしまう。顎関節の痛みが
 
増す。特に右顎の痛みが大きかった。
 
 一度は安定していた顎の位置も不安定になり、噛み合わせも左右前後にずれるようになっ
 
てしまった。
 
 
 
 奥歯は噛みしめるから治療の対象にはしないということで、前回は奥歯とスプリントが当た
 
らないように調整した。すると、今度は奥歯の代わりに前歯がカチカチや噛みしめを始めた。
 
スプリントの前歯のところに噛んだ跡形が付き、擦った跡がピカピカ光る。
 
「カチカチ噛んだり、噛みしめるのは、体が無意識に反応して、高いところを潰して
 
低くしようとしているのですよ」
 
 歯科医はそう説明した。一般的には納得のいく説明だと思う。
 
 しかし、私の今の場合、前歯は自分自身の天然の歯だ。奥歯を低く削ったので、相対的に
 
奥歯より高くなっているだけなのだ。まして、奥歯はスプリントなしだと上下が届かないのだか
 
ら、高すぎるはずがない。「低すぎると、却って上下の歯を噛み合わせようとして、力が入る」
 
と、歯科医が以前に説明した状態ではないのか。
 
                                                                                                
 十月も終わろうとしていた。
 
「やっぱり調子が悪いです。クラウンなどを削ってから急に、こうなりましたよね。
 
だったら、削る前の高さにもどしていただけませんか?」
 
 思いあまって、頼んでみた。
 
「今、高くするのは危険です。あなたの歯は、噛み合わせが崩壊寸前の状態なのですよ」
 
 えっ?! いつからそんなことになったのだ。
 
「……そうですか? そんなあ~、ハハハハー」
 
 突然そんなことを聞かされても、どう理解すれば良いのか。驚きと憤慨と戸惑いで、なんと
 
言って良いか分からない。思わず笑ってしまった。
 
「ハハハハハー」
 
 歯科医まで楽しそうに笑う。なんで笑うのだと腹が立ったが、私が先に笑ったので仕方が
 
ない。
 
 ますます調子が悪いのに「もう、予約も三週間ごとで良いでしょう」と言う。頻繁に来ても
 
意味がないのだと。
 
 その後も症状は相変わらずで、診察のたびに同じような会話になった。
 
 ところが、「口腔内の変化になるようなことをするのは危険なので、もうクラウンや義歯は削
 
らない。削ったものを高くすることも、変化になるのでできない」と言っておきながら、その後も
 
また削ってさらに低くしてしまった。
 
 最初からだと、まず左が高いと言って削り、次に右を削り、また左を削り、その後また右を
 
るというように、だんだん低くしたのだ。まず診察日二回続けて一度、少し開けてまた二回
 
一度、少し開けて一回が一度の三度にわけて、合計で五回の診察日に削ったことになる。
 
 結局、大学歯科病院で五年以上もの試行錯誤を経て、やっと作った九本のクラウンや部分
 
入れ歯のうち七本が削られ、左右の奥歯とも上下がまったく届かない状態になったのだ。
 
あんなに嫌だったのに、食事時以外は一日中ずっとスプリントを付けなければならいように
 
なってしまった。
 
 顎関節も痛いし、噛むのにも不自由したが、顔の外観にも影響が出た。頬がこけて頬骨が
 
高くなり、下顎も尖ったような変な顔つきになったのだ。「正面からは目立たないけど、ちょっ
 
斜めから見ると、ほんとにペコッと頬が凹んでるよね。歯の状態でこんなになるのねえ」と、
 
人から言われるほどだった。歯の高さの違いなど一センチもないミリ単位のものだろうが、
 
すごいものだと、自分のことながら呆れるばかりだ。
 
                                                              
 とうとう十二月、年内最後の診察になった。
 
「今年はもう駄目でしょうが、来年初めにでも削ったクラウンなどを高くしてください。
 
お願いします。このままでは悪くなる一方ではないですか?」
 
「そうですね……」
 
 にこやかに答えてくれたので、安心して病院を後にした。
 
 年末年始に人と食事をする機会があるので、早くなんとかして欲しかったが、間に合わなか
 
った。仕方がない。来年までもう少しの辛抱だ。
 
 六月半ばにこの病院へ転院して、七月には顎位が決まり噛み合わせも決まったと言われて
 
喜んだ。ところが、その後、七月の終わりにクラウンなどを削ってから調子が悪くなり、夏も過
 
ぎ秋も過ぎ冬になった。どんどん症状は悪くなって、良くなる気配がない。食事に不自由なせ
 
いか、体重も減っていた。
 
 それでも診察のたびに、穏やかでにこやかな歯科医の対応にほっとして、膨れた不安が
 
小さくすぼんだ。きっと、なんとかしてくれる、最後まできちんと面倒を見てくれると、疑いもし
 
なかった。
 
 
 
 お正月が過ぎ、新年最初の診察の日が来た。
 
「スプリントに噛みしめなどの跡が付く限り、クラウンなどを高くすることはできません」
 
 一度は奥歯をスプリントに当たらないようにしていたが、また歯全体が当たるように調整し
 
ていた。それでこのときは、スプリントの右奥歯のところが割れて穴が開き、前歯のところも
 
噛んだ跡が光っていた。左奥歯からはじまった噛みしめやカチカチが、右奥歯へ、さらに前歯
 
へと、全部の歯に広がってしまったのだ。
 
「でも、先生、歯がこんなに低くなった状態では、噛みしめなどがひどくなるばかりでは……」
 
 噛みしめがなくならない限り高くできないと言うが、高くしない限り噛みしめなどはなくならな
 
いのではないか。これでは悪循環だ。やっぱり元の高さに戻して欲しい。
 
 しかし、歯科医は頑として、「高くはできない」と突っぱねた。
 
 ここでは保険治療はしない。だから、クラウンなどを作るとしたら自費になる。一本十万円。
 
削ったのは七本だから七十万円だ。歯科医の考えでは、今の私の状態で作っても合うものは
 
できないので、また作り直さなければならない。二回分の費用は誰が出すのだ。もとのクラウ
 
ンは歯科医が削って低くした。患者があっさり二回も七十万円を払う訳もない。歯科医として
 
も、おめおめと二回分は請求できないだろう。一回分の支払いで二回作ると大赤字だ。
 
作らないという理由は、それもあるのかも知れない。疑心暗鬼になってくる。
 
 これから、いったいどうなるのだろう。
                                                                                           
 
 次の三週間後の予約が来た。スプリントには、また同じような跡形が付いていた。
 
「まだ、奥歯の跡も強く付いていますし、前歯も前後に滑らせた跡が光っています。噛み合わ
 
せの位置が決まっていないのでしょう」
 
 歯科医の言葉が白々しい。
 
 私は高く作り直すようにまた頼んだ。だが、歯科医もまたできないと答え、今度は、前歯が
 
当たらないようにスプリントを調整した。奥歯のところは手を加えず、噛んだ凹みはそのまま
 
だ。調整後、スプリントがいよいよ緩くなって外れやすいと訴えたが、これくらいならと、これも
 
り合ってもらえない。
 
 診察が終わった。
 
「実は、四月から月に四回の外来が一回になります。それだと責任のある治療ができません
 
ので、他を探してください」
 
「えっ!」
 
 突然の思いもかけない話だ。しかも、自分で他を探せ!? 
 
「どこか紹介してくださらないのですか?」
 
「ええ……」
 
「ここの他の先生にお願いできないのですか?」
 
 他にも、大学から二人の歯科医が診察に出向いていた。
 
「それはできないです。頼むわけにはいきません」
 
「はぁ?!」
 
 どうして、頼めないのだ。
 
「……では、もといらっしゃった大学病院の他のお弟子さんにでも」
 
「こういうことができる人がいたのですが、もう辞めていませんので」
 
「はあ……、じゃあ、他の先生は?」
 
「もう、僕は大学を出ているので、口を挟むのは良くないでしょう?」
 
「えっ!? ……じゃあ、私はどこへ行けばいいのですか?」
 
「三月末までは診ますから、まだ二カ月あります。その間に探してください」
 
「でも、突然そんなことを言われても……、まったく当てがありません」
 
 沈黙が流れた。
 
 しばらくして、歯科医は背を向けて手を洗いながら言った。
 
「ああ、大学の歯周科にはまだ行ってますよね? 歯周科の先生に相談したらどうですか」
 
「はあっ?! でも、歯周科の先生は、補綴のことはご存じないと思いますが」
 
「じゃあ、補綴科のもとの主治医はどうですか?」
 
「でも、そこで治らないから転院したのです……」
 
 あまりのことに、私はまだ診察台から立ち上がれないでいた。歯科医は診察台に近づいて
 
来ると、いつもの穏やかな笑顔で言った。
 
「やっぱり大学病院が良いと思いますよ。設備も整っていますしね。
 
それ以外に僕は適当なところを知りません」
 
「でも、先生、大学だと診察は月に一回です。だったら同じことです。ここで月に一回で結構で
 
すから、診ていただけませんか?」
 
「そんな無責任な治療は、僕にはできません」
 
「どうせ、大学病院へ帰っても、他の歯医者に替わっても、この状態のままで型を取って
 
クラウンなどを作るだけです。だったら、ここで作ってくださったほうが、
 
まだましではありませんか?」
 
「補綴はスプリントの調整と違って、月に一回ではなく、もっとつめて診なくてはなりません。
 
月に一回では無理です。そんな無責任な治療を、僕はしたくないのです」
 
「次回に作ってくだされば、四月までの二カ月の間につめて診ていただけるので、
 
調整も充分していただけるのではないですか?」
 
「できないです。作ったものが合わないと、患者さんは色々注文を付けるものです。
 
僕は経験上、ようく知っています」
 
えっ!?  作っても合わないので作り直さなければならないと考えていて、やっぱり、それが
 
嫌なのだ。
 
 さらに歯科医は言った。
 
「あなたの歯は簡単には治らないですよ。噛みしめなどは、なかなか、なくならないものです。
 
まだまだ、これから長いことかかるでしょうね」
 
 えっ!?
 
  
 前回の写真は兵庫県の天然記念物指定になっている椎や樫などの常緑樹の照葉樹林です。常緑樹が多いと驚かれたようですが、他の山はこんな感じで落葉樹が
結構多いです。早春の頃は枯れ枝の若芽がだんだん膨らんで、遠くから見ると薄いピンクの靄がかったように見えます。春が来たなあと実感します。
余談ですが、この写真には竹がたくさん写っていますが、竹は山の雑草のようなもので、竹がはびこっているのは手入れされずに山が荒れている証拠だそうです。
 
 
                                                              つづく
 
 
 
 

 
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歯科治療9年の苦労ばなし  87 への16件のフィードバック

  1. Nami より:

    先生もつられて笑ったんでしょうね。でも、なんか、すごいショックな感じが伝わってきます。人当たりのいい先生だっただけに、突き放された感じですね。山が薄ピンクになったころの写真もみたいですね^^竹がはびこってる山は手入れをされていないという証拠なんですね~。

  2. ポポちゃん より:

    捨て鉢な先生ですね、以前の高さに戻すの難しいような。

  3. sakura より:

    こんにちは。もう言葉が見つかりませんね…せっかく良くなったと思ったらまたこんなことに。。赤い花だから元気が貰えそうな気がしたのですね!赤は元気を貰える色です!

  4. booo より:

    見事なまでの敗北宣言ですね。。。( ̄_ ̄;)しかも見事なまでの無責任さで。。。今はなんともコメントのしようがない感じです。。。先を見ていきたいです。。

  5. tae より:

    すごいお医者さんですねぇ。「無責任な治療はできません」って言い方はよく聞こえるけど、結局は無責任ですよね・・(´・ω・`;)兵庫県は山も海もあっていいですね~天然記念物ってすごいですね!!!

  6. アカショウビン より:

    歯科医って、失敗しても患者の命には関わらないから、こんなことが平気で言えるのかな?とまで思ってしまいます(ーー;)竹って元々日本には無かった植物だと聞いたような気がします。昔ほど竹を利用しなくなったので、密集した竹やぶを見かけますね(-""-;)

  7. hulala より:

    こんばんは突っ放す先生の方が無責任だと云ってやりなさいよ。ひどいじゃないですか。ここまでかかっていて他を探せですって、うったえてやる~~。

  8. САБУРО(サブーラ) より:

    うーん、・・・・・・難しいですね。無責任と言えば、無責任だけど、・・・・・・どんな医者も完全な医者はいないし、・・・・・・boooさんと同じく、今は何ともコメントのしようがないです。また続きを読ませていただきます。

  9. たんぽぽ より:

    いい先生だと思ったのですが、残念ですね。ようするに、お手上げだったのでしょうね・・・

  10. 乙女 より:

    噛み合わせが崩壊寸前?治療しておきながらそんな事をお医者さんの口から言うなんて・・・責任のある治療が出来ないから他へ行けとか信じられない事を言うのね(@-@)どうすればいいのかしら?????

  11. mako より:

    こんばん~~は^^私も歯は良くない方ですが同じ先生に20年以上診てもらってその先生が辞めたのでどうしょうかと思いながらも変わらない感じで診てくれるので、遠いけど通いつづけていますなので、白い花さんのように良き歯科医に出会わない出会っても結局は途中で診察中止なんて信じられないことですそんな医師がいるんだぁ~なぁとせっかく良い先生だと思っていましたが・・・酷いですね花綺麗ですね、赤で鮮やか

  12. 洋子 より:

    最初は良い先生にやっと巡り合えたような印象でしたがこんなことになろうとは・・・まさか、まさか、ですね・・・

  13. ぷち より:

    こんにちは・・・(^-^)私もお正月に突然歯が痛み出して休日に診てもらえる歯医者さんに行きましたが、ごく最近治療が終わっているはずの歯が膿んでいると言われ・・・びっくりしました。高い治療費を払っているのに・・・ちゃんとしてほしいですよね!!

  14. Misa より:

    こんばんは☆やっぱり・・・と言っては何ですけれど、ぽんぽんとテンポ良くお話が進んでいて、もしかしたらまた何かあるのではと不安に思いながら拝見していたので…治療を放棄するなんて、お医者さまとしてサイアクです。何回も思うけれど、患者さんの立場になって治療をしているひとが一体どのくらいなのでしょう・・・

  15. 白い花 より:

    皆様、コメント有り難うございました。信じて安心していただけに、ショックが大きかったです。医者不信というより、人間不信に・・・この10年を考えてみれば、腕に自信があって自信満々の先生ほど、何かあったときは失敗が大規模になっていて、居直りも激しいような気がします。こちらの精神的ショックも、歯に対する実害も大きいです。

  16. Tosh より:

    こんばんは 白い花さん♪ なるほど。 歯科医師のギブアップ宣言ですね。 このようなこともあるんだー! 驚くべき事実ですね。 難病みたいですね。 最初はそうではなかった。 最初の失敗が今の現状を引き起こした。 『初めが肝心』と言っても結果論。 これからどうするか、・・・。 現実派今もどこかの歯科医に診てもらっているようですが、 それもまた順調な経緯ではなく、トラブルを保持したままの診察・治療なのでしょうね。 つまり、まだ終わっていない! あなたの精神力に敬服します。 ある意味、これはあなたにとって、第二の人生ですね。 あなたに課された『テーマ』なのかも知れません。 それがどのように解決できるか、見させていただきます。

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